はじめに
仮想通貨の「保管方法」も重要
保有している仮想通貨をどのように保管するのかも重要です。
仮想通貨の保管方法については、一般に、(1)取引所、(2)ウェブウォレット、(3)ソフトウェアウォレット、(4)ハードウェアウォレット、などがあります。一概には言えませんが、(1)→(2)→(3)→(4)の順でセキュリティが高まるといわれています。
ここでは詳しく述べませんが、いくつかある保管方法のうち、取引所に多額の仮想通貨をそのまま預けておくことは、それなりのリスクを伴うという認識が必要です。
もしこれが多額の現金であれば、胸ポケットに裸で入れておくのか、財布に入れてカバンに入れておくのか、持ち歩かずに家の金庫に入れておくのか、銀行の口座に入れておくのか、その金額によって使い分けるはずです。仮想通貨の保管方法にも、そのような配慮が必要なことは、改めて言うまでもないことだと思います。
もちろん、不正アクセスによりユーザーから預かった多額の仮想通貨を流出させた責任は、一義的には取引所を運営する仮想通貨交換業者にあります。
銀行や証券会社であれば、これだけ多額の顧客資産の流出が発生した場合には、ユーザーから厳しく責められ、大事な信用を大きく棄損することでしょう。それが「仮想通貨」だからといって、ユーザーの被害や企業側の責任が軽くなるわけではありません。
むしろ、高い技術に根ざしているはずのフィンテック企業は、最新のIT技術を駆使したセキュリティ対策により、既存の銀行や証券会社と同程度かそれ以上の安心をユーザーに提供することが求められているはずです。
事件の教訓をどう生かすべきか
今回の流出事件は、コインチェックの自己資金によって被害額の大部分を補償するという方針が示されていますが、これは非常に幸運なことと認識したほうが良さそうです。
コインチェックは1月29日現在も一部機能を停止中
通常、ビジネスを立ち上げて数年のベンチャー企業が、顧客の預かり資産に関する数百億円の損失を補償できるだけの自己資金を持っているということは、まず考えられません。
今回の事件では、被害額の大部分が補償されるということをもって「良し」とするのではなく、仮想通貨に投資し、保有する私たちのリスクに対する認識を、改めて考え直す必要がありそうです。
また、それ以上に仮想通貨の取引機会を提供し、ユーザーの大事な資産を預かる側の仮想通貨交換業者は、改めてユーザーの求めているものや、本当にユーザーのためになることとは何なのかを真正面から真剣に問い直す必要があるのではないでしょうか。