はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は野瀬大樹氏がお答えします。
広島の実家から連絡があり、両親の家のすぐ横の戸建が売りに出たとありました。両親的には隣接しているためこの土地も所有したいと言っています。
売値は1500万円です。500万円を頭金として、1000万円を借入しようと考えています。
住宅ローンの金利1.5%で10年で払いきると計算すると毎月63,000円程の支払いになるようです。
質問です。
毎年の住宅ローン控除額はいくらほどでしょうか?(自分は住みません) 固定資産税は?
1500万円を一括で支払うこともできますが、その場合は株を1000万円分売らなくてはいけないので避けたいと考えています。
現在東京で賃貸生活をしており、将来は実家に戻る気はないので、この土地もいつかは売ることになると思います。
家屋部分は25年建っているので1500万のほとんどは地代と想定しています。
購入する場合のローンを組む額や、返済期間、その他税制上の検討事項などアドバイスよろしくお願いします。(30代後半 独身 男性)
野瀬: ご質問ありがとうございます。
そもそも住宅ローン減税はできるのか?
すこし気になる点があります。それは「そもそもこの隣家の購入に住宅ローン減税が使えるか?」というスタート地点での疑問です。
住宅ローン減税はもちろん中古物件でもまた増改築でも利用可能ですが、絶対的な条件として「居住用」というものがあります。ご両親が現在お住まいの家をそのままにして隣の家を購入する場合「セカンドハウス」とみなされてしまうと、住宅ローン減税を利用できなくなります。
まず、上記ローンのシミュレーションが通常の住宅ローンなのか、セカンドハウス用の住宅ローンかどうか一度確認してください。後者だとしたら住宅ローン減税は使えません。
もう一つ、住宅ローン減税には築年数の制限があります。通常で築25年以内、耐火建物でない場合は築20年以内です。地方都市の家屋は木造であることが多いので「家屋部分が築25年」というのは非常に気になります。
「住宅ローンは組む」と「住宅ローン減税の恩恵を受ける」というのはイコールではありません。これ以外にも床面積など細かな条件がありますので一度確認してみてください。
住宅ローン控除額はいかほど?
さて、仮に住宅ローン減税が適用できたとして、その恩恵はいくらぐらいになるのでしょうか?
住宅ローン減税の効果は、「毎年の年末ローン残高の1%」なので、年末時点で残高が仮に1000万円だとすると、1000万円×1%で10万円になります。この10万円まるまるご両親の税金が安くなることになります。
2年目の年末の残高が仮に900万円だと900万円×1%で9万円となるわけです。単純に毎年100万ずつ残高が減ると考えると、10万+9万+8万+…+1万となり、恩恵は10年間で55万円程度になります。
また住宅ローン減税はその10年間の間、確定申告を行わないと効果がありませんので、しっかり確定申告してください。
10年で55万円程度の効果ですと、税理士にお願いすると恩恵が消し飛ぶので自分で申告するとよいでしょう。手続きはそれほど難しくありませんし、やり方が分からなくても税務署の方に問い合わせると丁寧に教えてくれます。
その他住宅ローン減税における注意点
その他気になる点を列挙しておきます。
正直、ローン金額や返済期間をどうするかという点は、非常に失礼な言い方になりますが「ご両親がいつ亡くなるか」によって有利不利が変わります。ですから、そういったタイミングという不確定要素以外においてアドバイスできることを挙げました。
(1)ローン額について
1.5%程度でローンが組めるのであれば、頭金はもう少し、少なく(つまりローンはもう少し多め)でもよいでしょう。
住宅ローン減税は、ローン残高×1%がまるまるお得になるという非常に有利な制度です。金利も悪くないのであれば、ローン金額自体を多めにしてもよいでしょう。
(2)返済期間について
返済期間は10年でよいでしょう。なぜなら住宅ローン減税の効果が最高10年だからです。
3000万ものローンを10年で返済するのは大変ですが、1000万~1500万程度であれば、10年という期間にしたほうが住宅ローン控除の恩恵がきっちり受けられます。
(3)その他税務上気になる点
もしも質問者の方が将来住まれる予定の家ならば、いろいろ税務上お得になる方法があるのですが、売却を予定しているならばとれる手段はあまりありません。
ただ、10年以内にご両親が亡くなって相続が生じた場合には、その時点で住宅ローン減税は終わりになります点だけは注意してください。