はじめに

「11年間のファンド経営が終了し、すかいらーくは新しい時代に入りました」――。2月14日に開かれた2017年度の決算説明会で、すかいらーくの谷真社長はこう宣言しました。

しかし、強気の言葉とは裏腹に、同年度の業績は、本業の儲けを示す営業利益が前年度比で1割のマイナスという状況でした。それでも、谷社長は「事業の根幹に問題はない」と言い切ります。

2ケタ減益にもかかわらず、強気の姿勢を崩さないすかいらーく。その背景には、どんな事情があるのでしょうか。


誤算続きだった2017年度

同日に発表されたすかいらーくの2017年12月期業績は、売上高が前期比1.4%増の3,594億円だった一方、営業利益は同10.1%減の281億円となり、増収減益の着地となりました。会社側は当初、営業利益で前期比5.0%の増加を見込んでいたので、計画を大きく下回った格好です。

特に急ブレーキがかかったのが、第4四半期(10~12月期)でした。それまでの9カ月間は前期比3.3%の減益ペースで進捗していたので、最後の3ヵ月で巻き返すことができれば、少なくとも増益を達成できる可能性も残されていました。

しかし、予期せぬ事態が重なります。稼ぎ時の週末ディナータイムを2週連続で台風が襲いました。また、 株主優待制度を拡充したことで個人株主が会社の想定以上に増えてしまい、そのための引当金も膨らみました。

さらに、店舗のオペレーションを改善するために割引クーポンの発行枚数を10分の1以下の減らした結果、既存店の売り上げが停滞。会社側は既存店が前期比1%の増収となる計画を組んでいたため、そこに実態との大きな乖離が生まれてしまいました。

作業の複雑化が店舗運営を阻害

この既存店の売上高は、外食産業にとって大きな意味のあるものです。

確かに、新規で出店したお店のほうが売り上げは立ちやすいのですが、一方で開業初年度はさまざまな費用もかさみ、利益面での貢献は期待できません。つまり、開業から1年が経過した既存店の売れ行きが、会社の利益に直結するのです。

しかし、開業から1年が経過すると、通常、客足は落ち着いてしまうもの。開業2年目に初年度の売上高を超えるのは簡単なことではありません。そこで、割引クーポンなどを配布して、客足の維持を図ることになります。

ただ、すかいらーくの場合、このクーポンが300種類以上まで増えてしまい、逆に店舗のオペレーションを阻害する事態となっていました。レジでの業務に人手が取られると、他の業務にも支障が出ます。たとえば、料理の提供に20分以上かかると、客数は毎日3人ずつ減っていってしまうといいます。

「作業量の複雑さと店舗運営状況の悪化は正比例の関係にあります。いったん整理することで、2018年のスタートを切りたかった。第4四半期の落ち込みは、新しいすかいらーくを作るために必要な過程でした」(谷社長)

2018年度は店舗運営“改善元年”

2006年にMBO(経営陣による買収)によってファンドの傘下に入ったすかいらーく。昨年11月にファンドが保有株を売却し、11年に及んだファンド経営に幕が下りた格好ですが、この間、企業価値を最大化するため、利益率を重視する経営を進めてきました。

確かに、売上高営業利益率は2008年度を底に、2016年度には8%超の水準まで上昇。400億円規模の売上高を誇る外食企業としては、異例の高利益体質となりました。ただ一方で、現場では上記のようなオペレーションの歪みも生じていました。

「レストランとして、当たり前の運営状況に引き上げていく」(谷社長)。そのための施策を2017年度の第4四半期から打ち始め、いよいよ2018年度に本格化させていくフェーズに入ったというわけです。

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