はじめに

野菜高騰で際立つコスパの高さ

2017年10月に続いた天候不順の影響で、野菜の出荷量が減少。スーパーなどでは同年末から葉物を中心とした野菜の高値傾向が続きました。そんな中、高騰する野菜の代替品としてトマトソースが選ばれてきたそうです。

「野菜はいつも通りに摂りたいけれど価格が高い、節約もしなければいけない」。そうした意識が働く中、1つの缶の中にトマトとニンニクとタマネギが凝縮されたトマトソースは「コストパフォーマンスが良いと認知されてきたのではないでしょうか」(渡邊さん)。

カゴメ基本のトマトソースの店頭想定価格は160~180円前後(税抜き)。実際、それだけの生鮮野菜をそろえようとすると、価格は上回り、さらに長時間炒める手間も加わります。

栄養面でも、生のトマトから料理するのと比べてもほとんど見劣りしないそうです。トマトの皮を剥いているので食物繊維を多少除いているものの、「トマトの健康成分であるリコピンは熱にとても強いので、加工したからといって減るものではありません」(武田さん)。

同社ではそもそも、野菜の価格が高騰すると加工食品や飲料の売り上げが伸びる傾向がありました。同じように野菜が高騰した2012年には、それだけが影響しているとは一概には言えないながらも、「野菜ジュースが大幅に売り上げを伸ばしました」(渡邊さん)。そうした動きが、今回は野菜ジュースにとどまらず、トマトソースまで及んでいるようです。

「生鮮野菜の値段をそんなに意識しない状況であればコスパについてそこまで深く考えなかったお客様が、野菜の値段が高くなったことで、より節約を強く意識するようになり、トマトソースのコスパの良さが引き立って見えたのではないでしょうか」(武田さん)

もはや「暮らしのソリューション」?

今まで長時間かけていた煮込み料理が、フライパンにソースを入れ、具材を並べて、10分煮込むだけでできあがる。共働き世帯の増加によって時短ニーズが高まる中で、そうした時短調理を可能にした点も、カゴメ基本のトマトソースが選ばれている理由の1つのようです。


ミートソースもフライパンで10分ほど調理すれば完成

主力の野菜ジュースの販売が好調で、今年度は3期連続で過去最高の経常利益を見込む同社。過去最高の売り上げを更新し続けるトマトソースが業績に寄与する割合は、まだ約5%に過ぎません。

それでも今後は、家庭用の食品事業で大きな柱であるケチャップとソースに次ぐ、「第3の柱にしていきたい」と武田さんは意気込みます。

確実にリピーターを獲得し、年々過去最高の売上高を更新しながらここまで来れたのは、カゴメ基本のトマトソースが今の時代のニーズに合致し、「暮らしのソリューションになれたからだと思います」(同)。

2018年1月には、発売16年目にして初めてテレビCMを放映しました。その効果もあり、前年同月比57%増と月次売上高でも過去最高を記録。16年目の滑り出しは好調です。

野菜の価格高騰時の新しい選択肢になってきたカゴメ基本のトマトソース。今までにないメニューや調理時短の対応など、新しい価値を生み出し続けてきたことが、過去最高の売り上げを更新し続けられる秘訣なのかもしれません。

(文:編集部 土屋舞)

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