はじめに

9期連続の経常増益――。消費者の節約志向や人件費・原材料費の上昇という逆風が吹く外食業界にあって異色の連続成長を遂げているのが、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを運営するロイヤルホールディングス(HD)です。

2017年12月期も経常利益は前期比16.3%増の60億円と、会社側の従来予想(56億円)を上回って着地。ロイヤルホストが3億円弱の増益となったほか、機内食事業で5億円強、ホテル事業で2億円強の前期比プラスとなりました。

しかし、決算発表翌日の同社の株価は前日比で2.8%の下落。日経平均株価が同1.5%の上昇となる中で、逆行安となったのです。好業績なのに、株価はなぜ下落したのでしょうか。その背後には、ロイヤルHDが描く壮大な野望がありました。


好業績なのに株価下落のワケ

「増益幅は低く見えるかもしれませんが、しっかりと未来につながる投資をやっていきます」。前日に逆行安となった株価を意識してか、ロイヤルHDの黒須康宏社長は2月16日の決算説明会で、こんな言葉を口にしました。

好業績にもかかわらず、同社の株価が下落したのは、決算発表と同時に公表した2018年度の業績予想に一因があると考えられます。会社側の計画では、今期の経常利益は前期比2.4%増の62億円と、増益率が大幅に鈍る格好だったからです。

特に上半期に限ると、経常利益は前年同期比22.0%減の18億円と大幅減益になる見通し。「リッチモンドホテル」や「シズラー」などの専門店業態で出店が相次ぐほか、「未来につながる投資」がかさむことなどから、利益成長にブレーキがかかると会社側はみています。

黒須社長が「次の10年を見据えた成長の種まき」と位置付ける、今後3年間で総額226億円に上る投資計画。その先に描くロイヤルHDの将来像とは、どんなものなのでしょうか。

最多出店は“話題の新業態”

226億円の総投資額のうち、74億円を投じるのが直営127店の新規出店。このうち、最多の出店計画を組んでいるのが、3年間で25出店を予定している新業態です。

ロイヤルHDは昨年11月、「GATHERING TABLE PANTRY」という新業態を東京・馬喰町に開業しました。この店舗では、完全キャッシュレスやセルフオーダーなど、これまでの業態にはなかった斬新な店舗運営手法を導入。多くのメディアでも取り上げられ、話題となりました。

ここで蓄積した、店舗におけるIT化促進やセントラルキッチンの最大活用、狭小立地での運営ノウハウを横展開。労働人口の減少や顧客の節約志向に対応した店づくりを進めていく考えです。

そのためのシステム投資にも、3年間で35億円を投入する予定。店舗など現場レベルの効率化だけでなく、問い合わせ対応窓口の集約やオフィスのフリーアドレス化などによって間接業務の最適化も図ります。

ロイホは年30店を積極改装

このほか、既存店の改装・改修には77億円を投じます。ロイヤルホストは年間30店、天丼チェーンの「てんや」では同20店ペースで老朽店舗の改装を実施していく計画です。

また、ロイヤルホストでは、昨年のうちに24時間営業を完全に廃止したことを受け、ランチとディナーの時間帯に経営資源を集中的に投下。ピーク時の店舗運営をスムーズにすることで、顧客の満足度を高め、来店頻度の向上を目指します。


ロイヤルホストはディナータイムの運営態勢を強化

一方、てんやでは、持ち帰り用の窓口を拡張するなど、テイクアウトの強化を図ります。さらに、新業態で成功したセルフオーダーの仕組みを導入することも検討中。「拠点や客層によって、どの程度活用できるのか、検証していきます」(黒須社長)。

こうした一連の施策によって、12期連続の経常増益を達成。2017年度の60億円から、2020年度には75億円を目指すというのが、ロイヤルHDが掲げる成長の絵姿です。

「出店も含めて、今期をしっかり計画通りに行うことで、先へとつながっていく」(黒須社長)。2020年のさらに10年後を見据えて身を縮める今年、実際にどんな手を打てるかがロイヤルHDの今後を左右しそうです。

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