はじめに
ここ数年“爆買い”という言葉が浸透すると同時に、なんとなく中国には1月から2月にかけて「春節」と呼ばれる長期休暇があって、競うように海外に出ていくということが一般にも知られるようになってきたと思います。
中国の大手オンライン旅行サイトが政府系研究機関と共同で発表した予想によれば、今年は史上最高となる650万人の中国人がこの期間に海外に出かける予定とのこと。日本は個人旅行のビザ取得がそこまで容易でないにもかかわらず、目的地として第2位に位置づけられています。
たとえば横浜中華街では毎年、この春節を観光の目玉として、いろいろなイベントを実施しています。横浜に限らず神戸や池袋など中国人が多い地域でもイベントが行われますし、その他の場所でも春節セールが行われるなど、日本でも少しずつ生活の中で目にする機会が増えてきました。
では、他の国ではどうなのでしょうか。以前私自身が撮影した、または世界各地にいる友人から送られてきた写真を紹介しながら、世界各地の春節の様子を紹介したいと思います。
春節の日程が毎年変わる理由
そもそも春節とは、いわゆる旧正月(旧暦の正月)を指します。日本人が祝う正月は太陽暦(新暦)に沿って定められていますが、旧暦は月の満ち欠けに応じて決まる太陰暦(中国語では『農暦』とも)に基づいて決められています。
太陰暦の1年は354日と太陽暦より短いためズレが生じ、太陽暦に基づいた暦で生活する私たちから見ると、毎年違う日に春節が訪れるように感じるわけです。
中国では、旧暦の大晦日から7日間は国が定める祝日になっており、会社によってはそれに数日プラスしてさらに長い連休にする場合もあります。春節はもともと中国のお祝いですが、中国人が移民としてさまざまな国に移住したことなどから、世界各地で広がっています。
ただ、その受け入れられ方には場所によって違いがあり、その国での中国系移民の立場や人数、歴史や現在の中国との関係などによってさまざまです。
米国では中国文化紹介の場に
アジア以外で最大の中国系人口を誇るアメリカ。人民元と同じ略称のCNY(Chinese New Year)という呼称も比較的定着しており、特に都会ではいろいろなイベントが行われます。ニューヨーク、マンハッタン島中心部にあるチャイナタウンでは、道路を封鎖して大規模なパレードが行われます。
ニューヨークには中国南部の広東省広州出身者が多いことを反映して、パレードでも南方の都市名が多く見られる
出演者は中国系が中心ですが、さまざまな人種・世代の人が見物に来ており、地域挙げてのお祭りイベントになっていることがわかります。
郊外のチャイナタウンでも、獅子舞が近隣の店舗を回り、新年を祝していました。獅子に同行していた人の様子を見ると、おそらく地元のカンフー教室の生徒が企画したようです。
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一方、実は人口の1割前後がアジア系というニュージーランド。最大の都市であるオークランドを歩くと頻繁に中国語を耳にしますし、アジア系の大半は中国系と感じました。
その中国系人口の多さの割に明確に区切られたチャイナタウンがなく、逆に街中の至る場所に漢字の看板を掲げた中国系の商店などがあるのが、ニュージーランドの特徴といえるでしょう。
移民が多いこともあり、春節イベントにも力が入っています。規模はアメリカには及ばないものの、花火をはじめとするさまざまなイベントが行われています。一緒に楽しみながら、中国系以外にもその文化を紹介する場になっているのが、アメリカやニュージーランドの特徴といえそうです。
自分たちで祝う傾向が強い欧州
国連機関が多くあることで知られ、オランダの事実上の首都と呼ばれるハーグでは深圳からパフォーマンス団体が訪れたほか、子供向けの中国文化体験教室なども行われたそうです。写真を見る限りでは、アメリカなどに比べると、中国系の参加者の比率が高いように思います。
オランダで開かれた春節イベント
実はオランダは歴史的に中国系移民が多い国で、留学先としても人気です。こうしたイベントも、アメリカのそれほどローカル向け、外に向けた文化発信の場ではなく、自分たち中国系向けという意味合いもまだ濃いのでしょう。
イタリアのローマでも、広場で春節を祝う花火が盛大に上がり、コンサートでイタリア人が中国語の伝統的な歌を披露するなど、イベントが行われていました。また、街には干支や中華風の仮装をした子供などもいたようで、ちょっとしたカーニバルみたい、とのことでした。
ローマの広場では花火を打ち上げて春節を祝った
アメリカやニュージーランドのように中国文化の紹介という側面もありながら、中国からパフォーマーを呼ぶなど、自分たちで祝う傾向も見えるのが、欧州における春節イベントの特徴だと考えられます。