「自然に株がわかるようになる。取引のアイデアがざっくざく湧いてくる。忙しい人でも手軽に取引できる。そんなツールを開発しました」

イベントの後半でタレントの石田純一さん、鈴木奈々さんとのトークセッションが控えていたからでしょうか。2月28日に開いたローンチイベントの檀上、フィンテックベンチャー「フィナテキスト」の林良太代表は、オーバーアクションで興奮ぎみに力説しました。

この日に発表されたのは、同社の子会社が開発した、コミュニティ型の株取引アプリ「STREAM(ストリーム)」。最大の特長は、株の取引に伴う手数料を日本で初めて恒常的にゼロにした点です。

はたして、どんな仕組みで手数料をゼロにしたのか。そして、どんな事業展開を考えているのでしょうか。テンション高めのイベントの内容から、ひも解いてみます。


SNSのように投資情報を共有

コミュニティ型の株取引アプリを謳うストリーム。SNSのようなユーザー同士の交流機能に大きな特長があります。

さまざまな銘柄ごとにタイムライン形式で、関連ニュースやツイート、ユーザーのコメントが銘柄にひもづいた形で閲覧できる仕組みになっています。出来高などのランキングによって、どんな銘柄が注目されているのか、といった情報を把握することも可能です。

林代表が説明する通り、「眺めているだけで自然と株がちょっとずつわかる立て付け」になっているわけです。

ユーザーのコメントには、自分で意見を投稿することもできます。納得できるコメントがあれば、Facebookの「いいね!」ボタンに相当する「役立つ!」ボタンを押すと、そのコメントをしたユーザーに「コミュニティポイント」が付与されます。

このポイントを貯めると、アプリ内での「ソーシャルステータス」が上昇していきます。ステータスは6段階に分かれており、ランクが上がると株取引の際に優遇が受けられる形になっています。

手数料ゼロよりお得な取引?

しかし、ストリームの最大の特長は、こうしたSNS的な機能ではありません。それが、日本初だという「手数料ゼロ」の仕組みです。

これまでの株取引の場合、それぞれの証券会社ごと、約定代金ごとに手数料が決まっており、投資家はそれに応じた額を証券会社に支払っていました。一定額以下の約定代金だったり、期間限定のキャンペーンで手数料をゼロにしている会社もありますが、恒常的に、約定代金の額にかかわらず手数料をゼロにしたのは、ストリームが日本初だといいます。

ストリームの手数料に対する取り組みは、これだけではありません。SOR(スマート・オーダー・ルーティング)を介することで、東京証券取引所で売買するよりも有利な価格で取引ができそうであれば、東証立会外取引で売買を成立させる「SMART取引」という仕組みを採用します。


「SMART取引」について力説する林代表

たとえば、1株600円の銘柄を100株分購入しようとした場合、利用者の立場からすると、東証で約定すれば、購入金額は6万円で手数料はゼロ。立会外取引で仮に5万9,976円で約定すれば、その購入金額のほか、有利に約定した差額相当(24円)の半額である12円を支払う形になります。

こうした立会外取引は「ダークプール」とも呼ばれ、外資系証券会社を中心とした機関投資家やヘッジファンドが主な参加者となっています。「今までプロ中のプロにだけ提供されてきた仕組みを一般ユーザーにも導入し、お得になった分の少しだけを成功報酬としていただくビジネスモデル」(林代表)です。

今後のスケジュールは、近日中にSNS機能限定版を公開する予定。4月から現物取引サービスを開始し、6月には信用取引もスタートさせる計画になっています。

大和証券との協業で事業を推進

このストリームのサービスを支える基盤となっているのが、フィナテキストの子会社であるスマートプラスが開発した「BaaS(ブローカレッジ・アズ・ア・サービス)」です。林代表は、このBaaSを「証券界のOS」と評します。

投資家のニーズが多様化する中で、それぞれのニーズに特化したフロントサービスと、既存の証券会社が持っている堅牢な証券インフラとを結びつけるプラットフォームがBaaSです。今回のスキームでは、インフラ部分を資本提携先である大和証券が担います。

林代表は、こうした動きを「証券3.0」と表現します。対面証券の時代が「証券1.0」で、ネット証券の登場が「証券2.0」。BaaSが普及することで、その次の時代に突入するというわけです。

その具体的な姿は、例えるなら通信業界におけるMVNO(仮想移動体通信事業者)のように、大手キャリアのインフラを基盤にして、各社がさまざまなサービスを展開していくのと近いかもしれません。

金融業界を変える奔流になるか

ストリームでは、上述のSMART取引における手数料と、信用取引の際の信用金利に加えて、BaaSを通じた事業者へのソリューション提供によって、総合的に収益化していく方針です。

掲げる目標は、日本最速で10万口座を獲得すること。しかし、「その目標を達成するだけでは、日本の金融は変わりません。BaaSを使って、小さな事業会社でも資産運用サービスに簡単に参入できるようになることで、日本の金融は変わります」。林代表はそう断言します。

一方で、ダークプールは価格や注文量が外部から見えにくく、どれだけの流動性が確保できるかという点に課題があるといいます。

テンション高めのイベントから生まれたストリーム(=流れ)は、日本の金融業界を一変させる“奔流”となるのでしょうか。成否のカギを握るのは、ダークプールにおける流動性をどれだけ高められるか、という点になりそうです。

(文:編集部 猪澤顕明)