はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する花輪陽子氏がお答えします。
54歳の夫が今春から役職定年で、年収が3割以上減り、700万円になります。60歳が定年で、その後は1年毎に嘱託採用があります。年収240万円程度ですが、65歳までは働くつもりです。
私は体調もあり、現在50歳ですが、60歳までパートで年収50万円がやっとです。子供が大学生になるのは夫が60歳の時なのですが、教育費を払いながら老後資金をどう用意し、運用したらよいものでしょうか。ちなみに、子供は高校から私立の可能性があり、大学は私立理系の可能性もあります。現在の資産は以下の通りです。
・預貯金:2,300万円
・株式:300万円
・退職金と401K合わせて:1,000万円程度
・個人年金:夫120万円×5年(60~64歳)、58万円×10年(60~69歳)
預貯金ではなく、積み立てNISAなどを始めた方が良いのでしょうか? 夫が60歳以降になったときの生活費をどう運用して、用意していけば良いのか教えてください。
〈相談者プロフィール〉
・女性、50歳、既婚、子供1人(中1)
・職業:パート
・居住形態:持ち家(戸建て)
・住んでいる地域:千葉県
・年収:55万円(夫年収:1,100万円)
・毎月の支出目安:45万円
花輪: 年収が700万円だと、ざっくりとした手取りは8割になるので、月に換算すると46万円程度の手取りになりそうです。現在支出の目安が45万円ということなので、支出の改善をしないとギリギリになりますね。
妻のパート収入はできれば全額貯金に回しましょう。
更に6年後の60~65歳まで年収240万円程度で働く場合、手取りにすると月16万円程になります。
個人年金の受け取りが178万円あるので、合わせると月30万円程度(パートを入れると35万円)の収入になります。少なくとも学費を除いた生活費は、この収入内に留められるようにしましょう。
進路別に異なる学費を試算
大学費用はいくらかかるのでしょうか。
大学の入学、在学費用に関しては、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果(国の教育ローン利用勤務者世帯)」(平成25年度)によると、国公立大学の場合で合計約519万円、私立大学文系の場合で約691万円、私立大学理系の場合で約812万円が平均的にかかっていることが分かります。
現在、預貯金と株式で2,600万円あるので、大学費用は貯金から捻出することが可能です。
仮に全額を預貯金や株式から使うとなると、残りの資産が1,800万円になります。退職金と401Kの約1,000万円を加えると、個人年金を除いた資産は2,800万円になりますね。
また、高校から私立かもしれないということですが、文部科学省の子供の学習費調査によると私立高校に進学する平均的な学費は3年間で311万円です。これに対して、公立中学の学費は143万円なので、月の学費が5万円程度上がる計算になります。
子供が高校の間はたとえ貯金ができなくても、支出の見直しをして収支を赤字にさせないようにしましょう。
老後、貯蓄の取り崩しを遅らせる最も良い方法
60~64歳の月収はパート代や個人年金も合わせて35万円程度。65~69歳までは個人年金の受給額が年58万円に減り、妻も仕事を辞め、夫も65歳で仕事を辞めるとなると、収入が激減します。
50歳を超えると公的年金の見込み額を「ねんきんダイヤル」から確認することができます。まずはもらえる公的年金額を調べましょう。
公的年金と個人年金などで不足する部分は、貯蓄(約2,800万円)からの取り崩しになります。できれば100歳まで貯蓄を枯渇させないのが理想的です。
貯蓄の取り崩しを遅らせる最も良い方法は、生活費を抑えるということです。
現在、45万円の生活費がかかっていますが、子供が独立をした後は生活費を7割(31.5万円)程度で見積もりましょう。家計調査によると高齢無職世帯(2人以上世帯)の平均的な毎月の生活費は27万円程度です。
仮に公的年金などの老後の収入が月26.5万円ならば、支出が月31.5万円だとすると、年間の赤字額は60万円になります。
たとえば個人年金の受給が終わる、70~100歳までの30年間の赤字を補填するには、1,800万円の貯蓄が必要になります。貯蓄額が2,800万円だとすると、予備費に1,000万円、生活費に1,800万円回すことができます。
妻の収入は手を付けずにそのまま貯金
余裕資金をもっと多く備えたいなら、夫が定年になるまで、特に子供が私立高校に進学するまでの今が貯めどきです。パート収入50万円は手をつけずにそのまま貯めたいですね。
積み立てNISAを活用するのも良いですが、仮に運用リターンがゼロだったとしても最低限の老後資金を作ることはできそうなので、お金を減らさないように、リスクを取り過ぎないよう注意をしましょう。