はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回はプロのFPとして活躍する高山一恵氏がお答えします。
31歳、DINKSです。家計管理は夫婦で別々に行っています。夫が家賃、私は生活費を支払っています。夫はお金に興味がなく、貯蓄もあればあるだけ使ってしまい、別口座への資金移動や銀行口座開設の手続きも面倒くさがるほどです。夫婦別口座でも問題ないと考えていますが、今後どのように夫にお金への意識を変えてもらえばよいのでしょうか。
〈相談者プロフィール〉
・31歳、既婚、子供なし
・居住形態:賃貸
・居住地域:神奈川県
・毎月の手取り収入:夫(会社員)月50万円 妻(SE)月40万円
・毎月の支出目安:家賃17万円、食費6万円
高山: ご質問ありがとうございます!
お金と人生を結び付けて考えることが大切
今回のご相談者さんのように、「パートナーがお金に無関心で困る…」というご相談は少なくありません。一般的に男性に比べて女性の方が将来のお金について考える傾向にあり、男性の方が無頓着というパターンが多いようです。
特に夫婦ともにバリバリ働き、世帯収入が高い場合には、生活する上で特に不自由を感じる場面がほとんどないはず。ですから、何かきっかけでもないと、家計について真剣に考える機会がありません。
そこで重要なのは「夫婦で話し合うこと」。2人で共通の目標を作ったり、夫、妻それぞれが叶えたい夢や希望などを共有したり、夫婦で今後の人生について話し合う機会を持ちましょう。
お金に意識を向けるには、「お金を貯める目的」や「何にお金を使うことが幸せか」など、人生と結びつけて考えることが大切です。
話し合うときのポイントは、将来の夢について楽しんで話すこと。ご主人はお金を使いたい方のようなので、現実的になりすぎて「そんな夢は無理」となってしまうと、ご主人の気も削がれてしまいそうです。夫婦でワクワクするような人生目標を持てるといいですね。
手間がかからない方法で貯蓄を仕組み化する
高収入の共働き夫婦の場合、“家計管理は別”というケースは多いのですが、お互いの家計を開示したがらないのは「自由になるお金が少なくなってしまうかもしれない」という不安があるようです。
確かに、お互いの収支をすべてさらけだしてしまうと、パートナーからいろいろと指摘されてしまうかもしれないというのはわかります。とはいえ、相手が貯めてくれているだろうと思ってお互いが好き勝手に使っていたら、実は貯蓄がなかったというのでは困ります。実はこれ、相談の現場でよくあるケースです。
お金が貯まりやすいという観点からすると、夫婦の収入を全額共通のお財布に入れ、そこから固定費や生活費、お小遣いも割り振る「共通財布型」が良いのですが、いきなりはハードルが高いでしょう。
ですから、まずは将来の夢や目標などを話し合い、準備するべき貯蓄を2人で把握。2人で共通に貯められる貯蓄口座を作りましょう。貯蓄金額については、毎月2人で共有し「見える化」することが大切。貯蓄が順調であれば、お互いのお金の使い方について寛容になれます。
ただし、貯蓄口座を作り、それぞれがその口座に送金となると、ご主人はハードルが高くなってしまうかもしれません。
たとえば一部銀行が提供しているサービスに「定額自動入金」というものがあります。他行口座から毎月指定日に指定の金額を自動的にその銀行の口座に入金されるというサービスです。こちらの口座を貯蓄口座に活用するとした場合、お給料の振込口座から毎月自動的に送金され、自動的にお金が貯まるというわけです。
これは一例ですが、このように手間がかからない方法で貯蓄する方法を提案してみると、ご主人もやる気になってくれるかもしれません。
世帯収入が多くてもリスクは潜んでいる
夢や希望を話し合うことも大切ですが、見落としがちなのが、人生に潜むリスクです。相談者さんのご家庭は、夫婦共に年収が高いので、一見家計が安定しているように見えますが、不安要素もあります。
たとえば今後、子供が生まれたり、親の介護をしなくてはならなくなったりした場合、費用が増えるにもかかわらず、夫婦いずれかが勤務形態を変更して家計の収支が大きく変わる可能性もあります。また、世帯収入が高い場合、高いことを前提とした暮らしをしているので、収入減や急激な支出増加への耐性が低いケースも多いようです。
夢や希望を話し合い、ご主人がお金について前向きに考えてくれるようになったところで、こうした人生に潜むリスクについても話し合えるようになると良いですね。
夢を実現することを考えつつ、リスクについても備えるライフプランを作成し、具体的に必要な金額を落とし込んでみると、ご主人も具体的に考えるための資料があるので、今後のことについて真剣に考え、意識を変えてくれるかもしれません。
まずは、シンプルなことですが、夫婦の間での話し合いが大切です。