はじめに

スイカは“稼げるフルーツ”になるか

また、イチゴやトマトに挑戦する若い世代がいる一方で、スイカの生産者はほとんどが高齢者となっています。理由は、スイカがイチゴやメロンに比べて稼げる農作物ではないからです(下図)。

もちろん、こうした現状を変えようと、取り組みを進めている生産者もいます。もともと夏に作られていたスイカを、品種改良や栽培技術向上の努力によって、オフシーズンに収穫できるようにしたこともその1つです。結果として、今では熊本県のスイカは通年収穫できるようになっています。

ただ、3月初旬からスイカを出荷できるようにする道のりは、決して平坦なものではありませんでした。

日中の農作業で疲れた体に鞭打って、夜は電気スタンドの下で交配作業をし、かけ合わせた品種を栽培します。生育を待たなければいけませんので、結果はすぐには出ません。試行錯誤の末、うまくできたものだけを残し、ようやく今日のような通年収穫が可能になったのです。

熊本スイカのガラパゴス進化

生産者の努力は、これだけにとどまりません。熊本県では、品種改良によってさまざまな種類のスイカが生み出されています。最盛期には10キログラムを超える大玉スイカや、1玉2キログラムにも満たない食べきりサイズの小玉スイカ、そして種なしなのにとてもおいしい「ブラックジャックスイカ」などがあります。

中でも、ブラックジャックスイカは珍しい品種です。従来の種なしスイカは食べやすいのですが、味が良くないので、店頭に並んでは姿を消すという事を繰り返してきました。ですが、この新品種は種なしなのに甘くておいしいということで、大きな反響を呼んでいます。

このブラックジャックスイカをよりおいしく、より長く食べられるよう、品種改良も積極的に行われています。知人の生産者さんは、次のように語ります。

「まずは6月中旬までしか収穫ができなかったブラックジャックスイカを、お中元のピークシーズンまでもたせるようにしたい。そしていつかは大玉スイカのように通年収穫できるようになればいいと思う」

日々、ブラックジャックスイカの研究に余念がありません。農家の後継者不足と高齢化という構造的問題を解消するため、スイカを儲かるフルーツに変えようという生産者たちの努力。私たち消費者にとっても、通年でおいしいスイカが食べられるようになれば、恩恵は少なくなさそうです。

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