はじめに
「高齢化、介護弱者、移動困難者……。こうした課題を解決しないと、地方自治体そのものの消滅が進む。先進技術を取り入れて、地方のモデル地域を作ることを期待しています」
千葉市の幕張メッセで3月23日に開かれた記者会見。長野県伊那市の白鳥孝市長はそう言って、力を込めました。
この日の会見のテーマは「ドローン物流、インフラ普及施策について」。そこで語られた“小さな一歩”は、日本の社会構造にどんなインパクトを及ぼすのでしょうか。
2018年は「ドローン物流元年」?
ドローン(小型の無人飛行機)を使った宅配サービスといえば、米アマゾン・ドット・コムが米英で実用化に向けて取り組んでいる「Prime Air」が有名でしょう。
日本でも、2015年11月の「未来投資に向けた官民対話」で安倍晋三首相が「3年以内にドローンを使った荷物配送を目指す」という指針を示しており、楽天や日本郵便などがさまざまな取り組みを推進中。今夏には航空法の省令改正を控え、山間部での利用に道が開かれるとみられています。
こうした状況を踏まえ、無人航空機システム(UAS)の産業・市場創造を推進する日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長(東京大学大学院教授)は3月23日の記者会見で、「われわれとしては、2018年は『ドローン物流元年』と位置付けています」との見通しを示しました。
しかし、現在の日本の航空法では、無人地帯かつ当事者が保有する土地でないと、ドローンを飛ばすことがほぼ無理な状況となっています。これを解決しようというのが、今回の記者会見で発表された試みなのです。いったいどんな取り組みなのでしょうか。
「空の道と駅」を整備
「ドローンポート登録制度」と名付けられた今回の取り組み。これは、ドローンの離発着場であるドローンポートの登録システムを構築し、ポートを利用したい事業者とポートを管理・運営する事業者とをマッチングしようというものです。
登録制度の概要を説明するJUIDAの鈴木理事長
システムを介して、利用者と運営者に対し、空路開設やポート設置のコンサルティングなど各種サービスを提供するパートナー企業を紹介。さらに、ポートの設置場所やドローンの飛行空域設定などについて、自治体が包括的にサポートします。
こうした体制を整えることで「空の道と駅」を整備し、ドローンが安全に利用されるための空路を切り開こうというのが、ドローンポート登録制度の主旨になります。
このドローンポートの開発を東京大学と共同で進めてきたのが、ドローンを統合管理するためのプラットフォーム事業を展開しているブルーイノベーションです。
従来のドローンの自動飛行ではGPSの援用を受けて着陸していたため、場所によっては数メートルの誤差が生じていました。そこで今回のドローンポートでは、電波とセンサーを使ってポート上の画像を認識することで、誤差を数十センチメートルの精度まで高めて着陸できるようにしました。
また、ポート付近に侵入者がいる場合にはドローンに停止するよう指示を出したり、風向風速計を設置することでポート周辺の風の状況を把握できるようにしています。さらに、飛行支援のクラウドシステムが入っており、飛行禁止エリアを事前に把握できたり、気象情報を事前に把握して、飛行ルートを作成してくれるといいます。