はじめに
「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」――。チャールズ・ダーウィンの『種の起源』の中に、こんな言葉が出てきます。
日本のITソリューション業界は、企業数が多く、多重下請けとなるピラミッド構造もみられ、海外と比較すると独自の生態系(エコシステム)を形成していると言われています。一方で、テクノロジーは日々進化しています。そのため、企業が生き残るには変化への対応が重要です。
今回は、「DARWIN(ダーウィン)」というキーワードで業界におけるテクノロジーのトレンドを整理し、変化に対応しようとしている企業を取り上げます。
重要なテクノロジー要素の頭文字
「DARWIN」という言葉を目にしたのは、ソフトバンクグループが毎年開催する法人向けイベント「Softbank World 2017」です。企業がIT戦略を立てるうえで、今後重要となるテクノロジーの頭文字をとったものです。
「D」はDigitalization(ビジネスのデジタル化)、「A」はAI(人工知能)、「R」はRobot(ロボット)、「W」はWireless(無線)、「I」はIoT(モノのインターネット)、「N」はNext Innovation(次世代イノベーション)を指します。
Digitalization → 経営コンサルティング会社
既存産業にITを活用した新しいビジネスモデルを持ち込み、産業構造の変革を促す動きがみられます。スマートフォンのGPS(位置情報機能)を使ってタクシーを呼び出し、指定した場所から乗車することができるサービスなどが当てはまります。
企業の経営戦略立案やビジネスモデル変革を支援するコンサルティングサービスを提供するベイカレント・コンサルティング(証券コード6532)などに注目しています。
AI → アルゴリズム開発会社
人間の知能をコンピュータ上で実現する動きがみられます。膨大なデータをコンピュータに学習をさせ、コールセンターでの応答や医療分野での画像診断などで実用例が出てきています。
NTTドコモ(9437)やトヨタ自動車(7203)が出資しており、言語解析や画像認識のアルゴリズム(演算手順)を開発するPKSHA Technology(3993)などに注目しています。
Robot → 組み込みソフトウェア開発会社
日本の労働人口の減少といった問題を背景に、ロボットの活用による省人化や業務の自動化を目指す動きがみられます。観光案内ロボットや介護ロボットなどが登場しています。
産業用ロボットや自律二足歩行ロボット、情報家電向けにさまざまな組み込みソフトウェアの開発実績を有する富士ソフト(9749)などに注目しています。
6つの頭文字で事業分野を分散
Wireless → ネットワークセキュリティ会社
5G(次世代無線通信規格)の導入により、無線ネットワークが進化する動きがみられます。高信頼性・低遅延、大量端末の接続、高速・大容量のデータ通信が実現されていくとみられます。一方で、社会インフラや自動車、工場などへのサイバー攻撃に関するセキュリティ対策も重要になってくるでしょう。
KDDI(9433)が出資しており、企業の情報システムに対してセキュリティの脆弱性診断や24時間監視サービスを提供しているラック(3857)などに注目しています。
IoT → デバイス開発と制御ソフトウェア開発会社
「IoT」とは、Internet of Thingsの略であり、あらゆる機器や設備がインターネットにつながり、さまざまな情報を集めて工場などの生産性向上に役立てる動きがみられます。センサーの小型化・低価格化を背景に、今後も広がりが期待されています。
佐賀県と協業し、ドローン(無人航空機)を活用して有明海の海苔養殖現場を上空から監視する実証実験を手掛けるオプティム(3694)などに注目しています。
Next Innovation → 仮想通貨関連事業者
「Next Innovation」とは、次なる革新を意味します。仮想通貨元年とも言われた2017年を経て、2018年は仮想通貨関連事業者の事業展開に新たな動きが見られると考えています。具体的には、(1)採掘(自社マイニング、クラウドマイニング)、(2)供給(取引所、販売所)、(3)活用(決済、送金)などが進展していくとみられます。
2017年12月より仮想通貨の採掘事業を開始したGMOインターネット(9449)などに注目しています。
6つの頭文字でポートフォリオを組めば、事業分野の分散を図りつつ、次世代技術の成長の恩恵を享受することができそうです。
(文:いちよし経済研究所 企業調査部 藤田要)