はじめに

回数ではなく、予算を決める

高山さんいわく、こうした“破綻”を避けるには、「治療の回数ではなく、予算をまず決めること」。予算を決めると、無計画に使ってしまうのを避けられるだけではありません。パートナーと不妊治療に対する価値観が折り合わない時も、予算が見える化されることで、お互いに現実が見えて、「ここまでなら使ってもいい(使えない)」と落ちつくべきところに落ちつきやすくなります。

「予算を立てず、費用のかけ方で相手とウヤムヤのままだと、結局、妻が独身時代のへそくりを全て投入したり、共稼ぎの場合は、女性が際限なく自分の稼ぎを削るというループにはまりがちです。あるいは、夫のお小遣いだけひたすら削るということも非常に多く、しわ寄せが夫に偏り、どんどん夫婦の間にひずみができてしまいます」

このような状態だと、たとえ治療が成功して子供が生まれても、今度は教育費にどれくらいかけるか?でもめることが予想されます。「夫婦二人軸で考えるのか、子供が全てと考えるのか。予算を立てることは、互いの今後の人生観を確認する良い機会にもなります」。

予算を立てるのに、高山さんが提案するのは「まず、1年間分の生活費(固定費)を最低でも確保すること。次に住宅費について、これから買う予定なら、頭金(購入価格の2〜3割)は残しておく。ローンで購入済みなら、毎月のランニング・コストの中でローンが払える状態かをチェックします」。生まれた後の教育費についても、予想を立てておきます。

教育費は大学卒業までで一人平均1000万円と言われますが、幼稚園から私立に通うとその倍の2000万円。塾代も加えると、小学3年生から6年生までの通算で300万〜400万円が必要と言われています。

不妊治療のスタートが妻40歳や夫50歳であれば、想定外の費用がかかることもあります。役職定年で給料が下がったり、親の介護費用が必要になったりするからです。

さらに、不妊治療で使う排卵誘発剤は副作用が激しく出ることがよくあります。「営業職だったのを負担の少ない事務職に変え、給料が下がった」という人や「結局、仕事を辞めた」という人も少なくありません。「女性側は、こうした“二次的被害”のようなことで自分の収入が減る可能性も含めて、予算を考える必要があります」と高山さん。

使える予算・お金を軸に考えると、「43歳になったら、助成金が出ないので治療を止める」など、年齢で区切るのも考え方の一つ」。親に泣きつくという人もいますが、長生きの時代、親の老後資金を食い尽くすことは自分の首を絞めることになるので要注意です。

【予算の立て方】
・生活費の確保
・住宅費の予算
・生まれたあとの教育費
→治療にかけられるお金の目安を考える

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