はじめに

ソフトバンクが4月5日、今夏にも駐車場シェアサービス事業に参入すると発表しました。このサービスはAirbnb(エアビーアンドビー)で注目される民泊の、駐車場版のサービスといえるものです。

自分の駐車場を他人に時間貸しできるサービスなのですが、いったいどれくらいの需要があるのでしょうか。新しいビジネスチャンスの可能性を探ってみたいと思います。


駐車場シェアのメリットは?

シェアサービスの代表例を挙げますと、エアビーアンドビーに代表される民泊が「空き部屋をシェアするサービス」、ウーバーに代表される配車サービスは「車と運転手の空き時間をシェアするサービス」です。ほかには、都市部での自転車シェアなどが注目されています。

ソフトバンクが参入する駐車場シェアは、駐車場の空き時間をシェアする新しいタイプのサービスのようです。

たとえば毎日、車で出勤をする方の場合、朝、家を出てから、夜、帰宅するまでの間、自宅の駐車場はただの空きスペースになっています。この空いた時間を時間貸し駐車場として利用することができれば、思わぬ副収入が生まれる可能性が出てきます。

ソフトバンクはこのサービスを、流行のIoT(モノのインターネット)を使って提供を始めるといいます。ソフトバンクが提供する磁気センサーとカメラ付きセンサーを駐車場に設置することで、駐車場の持ち主が第三者に自分の駐車場を貸し出せるようになるというわけです。

駐車場シェアが難しかった理由

この面白いビジネスチャンスですが、なぜこれまであまり注目されてこなかったのでしょう。それについては、私個人が興味深い体験をしています。

実は5年以上前、ちょうどエアビーアンドビーが話題になり始めた当時、IT企業の社員向けの研修プログラムを運営したときの体験です。事業開発担当の社員たちに「駐車場シェアサービスの事業としての可能性を検討しなさい」という課題を出して、実際に1日かけてたくさんのチームに同じ課題を検討してもらったことがあります。

このときの検討結果が興味深かった点は3つありました。1つ目に、空き駐車場をシェアしたいという駐車場の持ち主は結構たくさんいらっしゃいました。2番目に、誰よりも早くこのサービスを始めれば、たぶん一人勝ちできるサービスになるだろうということもわかりました。

それならば、すぐに始めればいいじゃないかという話なのですが、3番目のポイントがボトルネックになりました。駐車場の空きや埋まっているという情報をリアルタイムで把握する必要があるのですが、それをやろうとするとコスト割れして、コインパーキングに勝てないというものです。

不正利用者が起こす迷惑行為

たとえば、このような駐車場シェアサービスを始めた際に、そのサービスのマップを見た第三者が「この駐車場は今、空いているからお金を払わずにただ車を停めてしまえ」と思って実行したとします。悪意を持って、最初からお金を払う気もなければ、予約をする気もなく、ただ車を置いていなくなるとします。

こういう迷惑行為をする人が出てくると、運営側はいろいろと困ります。まずマップ上ではその駐車場は空き状態になっているので、後から正当な会員が正当な価格で予約をして、いざ駐車場を使おうと思ったら、空いていないという状態になってしまいます。

次に、そういった迷惑駐車を排除できるかというと、これも私有スペースにおける迷惑行為ということで、簡単には警察を出動させられないという場合が出てきます。

つまり、空いている駐車場情報を把握したうえで、近くを走っている会員に「この近くにはこれだけたくさんの駐車場が空いていますよ。コインパーキングよりも割安ですよ」と表示することがサービスの根幹なのに、一部の迷惑なユーザーを排除する、良い方法がないのです。

仮にコインパーキングのようなフリップ板を設置して迷惑駐車の車が出られないようにする方法を導入するとすれば、コスト割れしてしまって、そもそも駐車場シェアで副収入を稼ぐこともできなくなります。

事業を実現するカギがIoT

そこで研修の場でも「将来的にIoTができるようになるまでは、駐車場シェアサービスは実現できない」という検討結果になったことを覚えています。そして今、まさにその時代になったのです。

安価なカメラ付きセンサーならば、駐車場の持ち主に1万円以下の価格で配布することが可能でしょう。それがインターネットに接続されれば、今空いているかどうかに加えて、お金を払ったユーザーの車が時間通りにそこに止められたかどうかも把握できます。そして、違法に利用している車のナンバープレートの場合、写真などの証拠も残せます。

そして「IoTを使えば事業化できる」という条件にはもう1つ、わかりやすい付随条件があります。通信会社が一番参入しやすいのです。

画像センサーをネットにつなげる場合の通信料がいくらに設定されるかによって、このサービスが成立できるかどうかは変わってくるはずです。この課題は、これからIoTビジネスを始めようとする事業者にとっては、誰もが念頭におくべき事業化のハードルになるはずです。

ところが、この問題を簡単にクリアできる事業者がいます。それはソフトバンクのような携帯通信会社です。IoT機器のモバイル通信料金をいくらに設置しようが、会社全体で見れば同じこと。

IoTの通信費用は、おそらく初期には高く、やがて市場が拡大するにつれて徐々に下がっていくことが想定されます。しかし、払うのも受け取るのもソフトバンクということであれば、その通信料金リスクは事業参入時にそれほど懸念する必要もなくなります。

そして、その意味において今回、ソフトバンクが駐車場シェアサービスに名乗りを挙げたことは、駐車場シェアサービスの構造が変わるくらいアツい出来事だったのです。

(写真:ロイター/アフロ)

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