『完全自殺マニュアル』『無気力製造工場』『人格改造マニュアル』など、生きづらさをテーマにした著作で知られる鶴見済氏の『0円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』が、2017年12月に刊行されました。なぜ今、鶴見氏は経済に注目したのか。新刊で伝えたいことは何なのかを伺いました。


『自殺マニュアル』から『0円で生きる』にたどり着くまで

──どのような経緯や動機で今回の『0円で生きる 小さくても豊かな経済の作り方』を執筆することになったのでしょうか。執筆テーマの変遷について教えてください。

鶴見:もともと自分が生きづらい内面を持った人間なので、この息苦しい社会でいかに楽に生きていくか? 何が自分たちを生きづらくさせているのか? をテーマに90年代から執筆活動をしてきました。

『完全自殺マニュアル』を書いたのも、「頑張って生きろ」「自殺なんかする人間は弱い」という、社会からの圧力への反発心から、「いざとなったら死んでしまうこともできるのだから、楽に生きていこう」と言いたかったんです。

経済の問題に意識が向き始めたのは2000年代半ばぐらいで、生きづらさの問題と経済の問題が重なってきたと感じ始めたからです。「経済成長のために頑張って働かなければならない」とみな言うけれど、むしろ我々を生きづらくさせているのはいまの資本主義経済の仕組みなんじゃないかって。

ちょうど格差・貧困の問題が取り上げられるようになったり、スローライフが提唱されたりして、経済成長主義の見直しを求める声が日本で高まったことも大きかったですね。

それで、資本主義経済の仕組みを調べて、その歪みや矛盾の記事を書くようになり、それらをまとめ直して出版したのが『脱資本主義宣言 グローバル経済が蝕む暮らし』(新潮社/2012年)です。

実例やデータから、行き過ぎた資本主義がどれほど我々の暮らしを圧迫しているかを指摘しましたが、それじゃあ、「具体的にどうすればお金が全てのこの社会で生きやすくなるのか?」を書きたいとも思っていて、出版したのが今回の『0円で生きる』です。

──前作までのイメージとは違い、実用性と親しみやすさがあったのが印象的でしたが、改めて、本書の内容と特徴を教えてください。

鶴見:そうですか(笑)。別に狙ったわけじゃないんです。批判だとどうしても怒りが前面に出てしまうけど、利益至上主義じゃない自分たちの経済を作ろうと実践しながら書いていったら、結果的にあたたかい雰囲気になったんですよ。

この本では、不要品放出市やサイトで貰ったり、シェアリングサービスや仲間を募って共有したり、ゴミとされているものを拾ったり、「富の再分配」である行政サービスを積極的に利用したり、自然界から採ってきたりといった、無料でできる様々なアイディアを紹介していますが、これらはすべて「無料の生活圏」を社会に広げるためのものなんです。

今は、衣食住・移動など、生きるのに必要なほぼすべてのことにお金が必要な社会なので、お金を稼ぐのが得意じゃない人は生きるのが大変になってしまう。そこで、「無料の生活圏」を広げ、お金への依存度を下げることで、お金を稼ぐのが得意でない人も生きやすい社会をつくっていこうというのが狙いです。