はじめに
さかのぼること20年前、1990年代はネットショップ黎明期でした。楽天市場やYahoo!ショッピングが誕生し、「自宅にいながら買い物ができる」という革命的なライフスタイルは驚きを持って迎え入れられました。
かつては、ド素人でもネットショップを立ち上げて商品を並べるだけで飛ぶように売れた時代があった“らしい”です。なぜ、断定していないかというと、私はそんなうらやましいビジネス体験をしたことがないからです。
今やアマゾン、楽天、ヤフーの大手3社でEC(ネットショッピング)市場シェアの半分を占めるといわれ、残りのパイをめぐって、とてつもない数のネットショップが熾烈な争いを繰り広げています。
このような状況を反映して、
「今さらネットショップ起業なんて完全に出遅れ、成功なんて無理」
「ネットショップの廃業率知ってる?90%だよ。無理無理」
「アマゾンのマーケットプレイスや楽天市場に出店しても、広告費がものすごくかかるから無理!」
といった悲観的な声がネット上にあふれています。
筆者は2015年にフルーツギフトショップを起業しました。世間的にはかなりの後発タイプと見られることが多く、「絶対に成功しないから起業なんてやめておけ」と、たくさんの人からアドバイスをいただいてきました。
しかし、「今からネットショップはもう遅い」というのは間違いだと思っています。ネットショップ起業には夢があふれており、今からでも十分成功できると考えています。実際にネットショップを経営する立場から、「ネットショップ起業=無理ゲー(クリアが困難なゲーム)説」について考察します。
日本のEC市場は伸びしろ十分
経済産業省のまとめによると、2016年度の国内のEC市場規模は15兆1,358億円で、前期比だと9.9%成長をしています。この15兆円というのは途方もない額で、他の業界と比べると、いかに市場規模が大きいのかがわかります(下図)。
現在、大手3社合計で約50%のシェアを持っており、残りの50%である7.5兆円にその他の企業がひしめき合っている構図です。今からネットショップを起業して大手3社に並ぶ会社を育てるのは、残念ながら難しそうです。
しかし、国内EC市場の今後について、「日本は他国と比べるとEC化率(ECで買い物をする割合)は低く、さらなる拡大をする余地を残している」と見る向きもあります。
実際、日本のEC化率は2016年には5.43%と、年々伸びてきていますが(上図)、それでも15%近い英国や8%台の米国に比べると、まだ伸びしろはありそうに思われます。
確かに日本は人口減少や少子高齢化など構造的な問題を抱えていますが、それでも現在の市場規模の大きさと今後の成長見込みを考えると、残りの50%のパイの中でシェアを伸ばすことができれば、今後の市場拡大の恩恵を受けて、成功できる可能性は十分にあります。
惨憺たるネットショップの実態
しかし、もちろん良いことばかりではありません。
ネットショップはリアル店舗より開業資金が必要ないので副業としてお店を持つ人も多く、参入障壁が低いゆえに競合がひしめいています。それだけにリアル店舗の廃業率よりも高いと言われており、ネットショップ業界では「初年度の廃業率は3割、2年目で5割」とされる厳しい世界なのです。
激しい競争の世界で生き残った少数の店舗が“ネットショップの勝ち組”という状況であり、「店舗を出して商品を並べれば勝手に売れていく」という甘い世界ではないことがわかります。これこそが現在のネットショップ業界の実態なのです。
だからといって、資本力のないショップが絶対に勝てない世界というわけでもありません。ネットショップ起業で失敗している人の多くは、次のような過ちをしているのです。