はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。
20代半ばのDINKSです。30歳までには子供を1人、ゆくゆくは2人か3人欲しいと思っています。これから子供を産むにあたり、どのように資産運用をしていけばよいのか悩んでいます。仕事は子供が生まれても続ける予定です(私は在宅可能な仕事です)。現段階で、すぐに使うお金は100万円程度残しておきたいのですが、しばらく使わない(おそらく子供が私立高校、大学に行くまでは使わないであろう)お金をどうやって管理していくのがベストなのでしょうか。
現状、私が「手取り20万円+ボーナス年間120万円」、主人が「手取り23万円+ボーナス年間60万円ほど」です。福利厚生として、家賃の半分を会社が負担しています。毎月、約23万円を生活費に充てています。内訳は以下の通りです。
<内訳>
・家賃(通常16万円):8万円
・水道光熱費:1.2万円
・食費:3万円
・携帯電話2台:0.5万円
・ガソリン代:1.5万円
・お小遣い:3.5万円×2人
・ジム:0.9万円×2人
合計:23万円
残り20万円のうち、7.3万円は自動で投資をしています。主人の確定拠出年金に2.3万円、積立投資信託に5万円です。その他はそのまま現金で貯金していて、年払いの車の保険や車検、旅行などに使っています。半年に一度100万円ほど残して投資信託に入れたりもしています。現在の資産の内訳は以下の通りです。
・投資信託:160万円
・仮想通貨:50万円
・現金:120万円
今から3年間くらいはDINKSの予定なので、年間300万円近く貯金できそうなのですが、このまま100万円を常時手元に残す方式で積立投資をしていくのがよいのでしょうか。積立投資の内訳は、「日本株:外国株:日本債券:外国債券=14:45:20:20」で、年に1回リバランスをしています。投資は20年みれば増えるというのを信じて、老後のお金は長期で3~7%で運用できればいいなと思っているのですが、将来子供が生まれて高校や大学でお金が必要になるときも、現在の投資信託から引き出すかたちでよいのでしょうか。それとも子供のお金は投資信託ではなく別途違う形で貯めておいた方がよいのでしょうか。よろしくお願いいたします。
〈相談者プロフィール〉
・女性、25歳、既婚(夫:会社員)、子供なし
・職業:会社員
・居住形態:賃貸
・手取りの世帯月収:40万円
・毎月の支出目安:23万円
花輪: よく「お金に色をつけよう」と言われます。「支出残額=貯金はNG!3つに分けて考えるお金の貯め方」でも、「すぐに使えるお金」「貯めるお金」「殖やすお金」に分けることをお伝えしました。
お金を4つのポケットで考える
こちらをさらに細分化させて考える方法があります。『ゴールベース資産管理入門 顧客志向の新たなアプローチ』(チャック・ウィジャー著・ダニエル・クロスビー著/日本経済新聞出版社)の中では、お金を4つのポケットに配分する考え方が紹介されています。
「1.安全」 「2.インカム」 「3.戦略」 「4.積み上げ」 です。
「1.安全」に関しては「すぐに使えるお金」であり、万一の際の生活費などに当たります。「2.インカム」に関しては今の収入を支えるために必要なもので、給与所得、年金収入、利子所得などに当たります。
「3.戦略」に関してはボラティリティを管理しながら増やす機会をうかがいます。ポートフォリオを組んで分散投資をするのはこちらに入ります。「4.積み上げ」に関しては将来の購買力増大という目的のために、大きなボラティリティを許容し資産の上昇を狙います。たとえば、起業、絵画などへの投資、仮想通貨取引などもこちらに当たるでしょう。
「1.安全」「2.インカム」「3.戦略」で、まずはしっかりと基盤をつくる
現在の資産配分から考えると、「現金120万円」は「1.安全」に当たります。毎月の生活費が23万円ということなので、約5ヶ月分の資産を流動性のある安全資産で確保できていることになります。最低限のハードルはクリアしているといえます。
「手取りの世帯月収40万円」は「2.インカム」のお金です。老後まで生活水準を維持するためには何らかのかたちで収入を得る仕組みを作ったり、公的年金や私的年金を確保する、債券や株式を保有して利子所得や配当所得を得る、などが考えられます。
「投資信託160万円」は「3.戦略」のお金に当たり、「仮想通貨50万円」は「4.積み上げ」です。
よく「4.積み上げ」と「3.戦略」を区別せずに考える人がいますが、ここを区別することが大切です。仮想通貨に投資をするのは悪いことではありませんが、「4.積み上げ」のお金なので短期間で資産が大きく変動することも理解をし、最悪のケースではゼロになってもよいお金で投資をすべきです。
また、「1.安全」「2.インカム」「3.戦略」でしっかりと基盤を作ることができれば、「4.積み上げ」でリスクを取ってよりよい生活レベルを狙うということも可能になります。いきなり「4.積み上げ」から始める人が多いですが、あくまでも順番を間違えないようにしましょう。
子供の教育費はどうやって貯める?
将来、子供の教育費が必要になった場合、投資信託を売却してももちろん大丈夫です。
教育費が必要になるのはまだ先なので、「3.戦略」で準備をしてもよいのですが、これから必要になるお金なので十分にリスクを限定して行うようにしましょう。また、確定拠出年金など解約しにくいかたちではなく、換金しやすいかたちで保有しましょう。
年間300万円くらい貯金ができそうということですが、老後まで使わないお金は確定拠出年金を活用させてもよいですし、もう少し中期的に育てたいお金はつみたてNISAを活用するのもよいと思います。