はじめに

男性なら人生の中で一度は遊んだことがあるであろう「野球盤」。球場型のボードの上で、ピッチャーの投げた金属製のボールをバッターが打ち返し、シングルヒットや2塁打と書かれたポケットに飛ばすという、野球の醍醐味を詰め込んだボードゲームです。

初代が登場したのは、今からちょうど60年前の1958年。玩具業界では異例のロングセラーとなっていて、「人生ゲーム」や「リカちゃん」を超える歴史を誇ります。今年は還暦を記念して、製造元のエポック社ではさまざまな新商品を発売する予定です。

野球盤はなぜ、ここまでのロングセラーとなりえたのでしょうか。長年にわたって愛され続ける秘密をひも解いてみます。


立て続けに60周年記念商品を投入

これまでも、30周年に当たる1988年には同年にオープンした東京ドームをイメージした「ビッグエッグ野球盤」、50周年の2008年にはともに50周年を迎えた小学館の『週刊少年サンデー』、講談社の『週刊少年マガジン』に掲載されてきた野球漫画のキャラクターを使った商品を発売してきたエポック社。

しかし、今年は「還暦なので、商品を大量に投入します」と、同社ゲーム事業本部の數原修マネージャーは興奮ぎみに語ります。


アニバーサリーブック付きの60周年記念モデル

4月21日には、60年の歴史などを掲載したアニバーサリーブック付きの商品を発売。3月3日からは3Dピッチング機能付きの阪神タイガースバージョン、4月28日からは同じく読売ジャイアンツバージョンを販売します。これまでも阪神版、巨人版を売り出したことはありますが、同じ年に発売するのは今回が初めてだといいます。

また6月9日には、ドラえもんバージョンとスーパーマリオバージョンを同時発売する予定です。ドラえもんは過去にも販売したことがありますが、スーパーマリオは今回が初めてのコラボレーションです。

順風満帆ではなかった60年

人生ゲームやリカちゃんも玩具業界ではかなりのロングセラー商品という印象がありますが、いずれも50年程度の歴史しかありません。野球盤は「現存するおもちゃの中だと長老格」(數原マネージャー)にあたるわけです。

60年間の累計販売台数は1,400万台。アナログゲームの中だと、売り上げで毎年トップ3に入ってきたといいます。

販売のピークは、1974年に発売した「AM型」というモデル。「A」は商品のナンバリングで、「M」は「消える魔球」を意味しているそうです。このモデルは累計300万台を販売したといいます。


最高のヒット作となった「AM型」

その後、1980年代には任天堂の「ファミリーコンピュータ」をはじめとしたデジタルゲームに押されて、野球盤の人気は衰退をたどります。しかし、デジタルゲームの高性能化が進むと、その流れについていけなくなった低学年の子供を中心に、アナログゲームが再評価される機運が高まります。それにつれて、2000年代半ばから野球盤の人気も復活してきました。

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