はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。
現在の職業に就いて5年目になり、住宅の購入を考えています。現在は賃貸で、駐車場・共益費込みで月12万円の家賃を払っていて、もったいないような気がしています。
今後の住宅価格について、さまざまな意見を耳にしますが、なかなか予想するのは難しそうで決め手にかける感じです。職業柄移動もあるので流動性の高いマンションのほうが向いているのかなとは思いますが、戸建ても視野に入れて検討しています。
頭金は諸費用込みで800万円くらい使っても、ある程度の余裕資金は残る状況です。購入のタイミングや、戸建てマンションとどちらがいいのかも含めて、アドバイスをいただけたらと思っています。
〈相談者プロフィール〉
・男性、既婚(妻:専業主婦)、子供なし
・職業:自営業
・居住形態:賃貸
・手取りの世帯月収:100万円
・毎月の支出目安:40万円
花輪: 持ち家か賃貸か、戸建てかマンションかは、それぞれメリット・デメリットがあるので、それらを比較してどちらがよいのかを考えましょう。
立地やグレードなどは「持ち家」に分があり
立地に関していえば、一等地には分譲マンションのほうが多く、広い家も持ち家のほうが物件はたくさんあります。
人によっては持ち家がステータスになることもあるようです。賃貸の場合は一生家賃を支払い続ける必要がありますが、持ち家の場合は住み続けることができれば、通常支払いは35年など一定期間で終わります。
ただし、持ち家の場合はローン・共益費・修繕費・税金(固定資産税や都市計画税)などの維持費がかかります。持ち家でマンションの場合は、一般に修繕積立金も経年とともに上昇します。戸建ての場合は共益費はかかりませんが、大規模な修繕が必要な場合はマンションと同様に費用がかかる場合もあります。
一軒家かマンションかに関して、コスト以外の特長もあります。マンションの場合のメリットは管理・メンテナンスやゴミ出しが楽、セキュリティーがしっかりしているなどの利点があります。
また、戸建てと比べて立地がよい場合が多いでしょう。戸建てと比べると賃貸に出したり、転売もしやすいです。戸建てのメリットとしては土地を所有することができるので建て替えなどが自由にできる、駐車場代がかからないといったことが挙げられます。
自営業の場合は賃貸も“アリ”な理由
相談者は自営業なので、自宅が賃貸でオフィス兼にされている場合は、使用割合に応じて一部を経費にすることも可能です。
持ち家の場合、住宅ローンの元金は経費にすることはできません。原則として業務として使用している部分のローンの利息支払いに留まります。完全に私用のマイホームとして考えている場合は、会計面のことを考慮に入れなくても大丈夫です。
金融機関によるローンの審査は勤務先・勤続年数や収入に大きく左右されます。自営業の場合はフラット35を選択肢に入れたり、頭金をたくさん作るなどの工夫も、場合によっては必要になります。会社勤めに比べると融資の条件が厳しくなる場合が多いからです。
また、賃貸は転居や支払額の変更が自由など融通が効くメリットも大きいです。自営業だと収入が安定しない場合も多いですが、そうした場合は引越しをして家賃を下げることも可能です。転勤になった場合も賃貸のほうが身軽に動くことができます。
購入時期は東京オリンピックが終わって落ち着いてから?
購入時期に関しては、東京オリンピックが終わって数年後の市場が落ち着いた頃が狙い目かもしれませんね。不動産の場合は株式市場と違ってタイムラグがあるので、すぐに下落ということにはならないかもしれないからです。
また、生産緑地の2022年問題がメディアを騒がせ始めています。生産緑地とよばれる指定農地の一部が、戸建てやアパート向けの住宅用地に姿を変え、不動産市場に供給される可能性があります。これから不動産を売買する予定がある人は、リスク要素として考えておいた方がよいでしょう。
もちろん、22年以降の税制がまだ固まっていない上に、エリアによっては受ける影響が限定的で済む可能性もあります。各自治体の土地計画施設図を見ると参考になります。
ただ、現在の市場環境としては超低金利のために住宅ローンを借りやすいとはいえます。2022年以降に金利が上昇する可能性もあるからです。
ご自分の資金繰りと市場環境とを整理して、購入がよいのか、賃貸がよいのか、購入する場合はいつがよいのかを焦らず考えていくとよいのではないでしょうか。