はじめに

価格は130万~200万円を想定

「われわれが考えられる、いろいろなものを盛り込みました。今後はいろいろな方のご意見を聞きながら、1つ1つの技術を精査し、2020年を目標に商品化を進めていきたい」。YKK APで開発を管掌する菅間信太郎副社長は、このように意気込みを語ります。

同社としては、AIが入っていて、ドアが家族を認識すれば、即座に必要な情報を送ってくれる部分がこの製品のメイン機能ととらえており、必ずしも画面を見てもらう必要はないと考えています。


アップデートゲートに搭載された各種機能

今後は必要な機能に絞ることで低価格化を進め、最低価格は130万円程度で販売したいとしています。一方で、フルスペックを求める場合には200万円程度の価格になるといいます。

現状の電気錠付きのハイグレード品が80万円程度であることを考えると、かなり意欲的な価格といえそうです。

「楽しみながら開けられるドアに」

それにしても、YKK APはなぜ、この未来ドアを開発したのでしょうか。開発背景について、菅間副社長はこのように説明します。

今後も新設住宅着工戸数の減少が確実視される中、同社で中期の事業方針として進めているのが、製品の高付加価値化と需要の創造です。ただ、窓やドアは家に必ず付いているものなのに、そこで生活している人に意識されることは少なく、家を新築したりリフォームする際も、キッチンやトイレ、バスに比べると、優先順位が低いのが現状です。

一方で、窓やドアは住民の生活環境や健康に対して、小さくない影響を及ぼします。「もっと窓やドアを意識してほしいし、楽しみながら開けられる方向に変えていきたい」。そんな考えの下、2016年にスタートしたのが「未来窓プロジェクト」でした。

第1弾では未来窓の構想を発表し、2017年には具現化フェーズとして、透明な有機ELを強化ガラスで挟んだ試作品を作成しました。ここで用いた技術は特許も申請しましたが、肝心の透明有機ELの量産体制が整わず、今も商品化のメドが立っていない状況です。

そこで、プロジェクトの第3弾では、ドアを先行して開発し、商品化フェーズに移行。前述のように、2020年の商品化を目指すことにしたのです。

商品化への“ゲート”は簡単ではない

ただ、商品化に向けては、解決すべき課題がまだいくつもあります。その1つが、メンテナンスの問題です。

これまでのドアであれば、何十年にもわたって使い続けることができますが、未来ドアでは液晶を搭載しているので、どうしても壊れやすくなっています。この点については、ドアの内部にもう1つドアが付いており、取り換えられる仕組みになっているといいます。

ただ、液晶の耐用年数次第では、何年かおきに交換する必要が出てきます。YKK APとしても、長期的なメンテナンスをどうしていくかが商品化に向けた課題の1つと認識しているようです。


未来のドアは2年後にどんな姿で現れる?

また、仮に不審者に対してドアを開けてしまい、足を挟むなどしてドアを閉めさせないような行動を取られた場合、ドアがどう反応するのかという点も課題です。現状では、ドアにモノが挟まっていることを感知すると、自動で開いてしまう仕組みになっています。こうしたセキュリティ面での配慮も、商品化に向けた課題の1つとなります。

未来のドアは2年後に、どんな姿で私たちの目の前に現れるのか。くぐり抜けていく必要のある“ゲート”は、まだいくつもありそうです。

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