はじめに

会社設立から今年3月でちょうど20周年を迎えたモーニングスター。投資信託に関する情報サービスの会社として、日本国内でも確固たる地位を築いてきました。

会社の業績も、本業の儲けを示す営業利益が2017年度まで9年連続で増益を達成。2018年度も10年連続の増益を狙っています。

それでも、同社の朝倉智也社長の表情は冴えません。理由は、9年連続増益のうち8年間は2ケタ増益だったものが、前年度は1ケタ増益にとどまったからです。

一方で、勢いを取り戻すための策も着々と手を打っているようです。足元の勢い鈍化にはどんな背景があり、そこからどうやって巻き返すのか。4月20日に開かれた決算説明会の内容から、分析してみます。


単体の苦戦で2ケタ増益が途絶える

モーニングスターが4月19日に発表した2017年度の業績は、売上高が前期比24.6%増の59億円、営業利益が同5.0%増の16億円となりました。2008年度からの8年間、営業増益率は2ケタが続いてきましたが、前期でその記録が途絶えました。

その理由は、モーニングスター単体の利益が伸び悩んだこと。アセットマネジメントなどの子会社は運用ファンドの純資産残高が増加し、信託報酬が大幅に増加しましたが、データサービスやメディア事業を展開するモーニングスター単体が苦戦しました。

中でも主因となったのが、一過性の開発案件がなくなったことと、大きな広告を出してくれる金融機関が大幅に減少したことです。後者の背景には、金融庁が主導するフィデュ―シャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)の影がちらつきます。

当局の出した大方針によって、広告主である金融機関が、新しいファンド商品を売り出すのにあたって大々的に広告を打ってフローで稼ぐという従来型の営業手法を見直し、インデックスファンドで顧客に中長期で資産を積み上げてもらうという販売スタイルに転換。これがモーニングスターの広告収入の減少につながりました。

こうした中で、朝倉社長は「モーニングスターもビジネスモデルを変えていかないといけない」と危機感を募らせます。前年度からそのための施策を打ち始めており、今年度はさらに加速していく構えです。

タブレット導入先を深掘り

では、具体的にどんな策を打っていくのか。キーワードとなるのが「サブスクライバー(定額収入)モデル」です。

たとえば、モーニングスターが保有する投資信託の情報などを調べることができるタブレットは、2017年度末時点では127社の金融機関が導入しています。2016年度末が70社だったので、1年で8割強も増加したことになります。これを2018年度末には200社まで拡大させる計画です。

そのうえで、導入済みの金融機関側に、顧客情報との連携や売買システムとの連携など、タブレット経由で提供するサービスのフェーズを引き上げていく提案を積極化。手数料収入の引き上げを目指します。

これと並行して、金融機関に対するタブレット利用のサポートも拡充します。各金融機関の営業員のタブレット利用率を毎日調査し、どれだけ使いこなせているかを分析。利用率が下がった支店があれば、本店に研修を提案します。ITリテラシーの低い営業員にはピンポイントでレポートを作成し、タブレットの利用率を引き上げる策を打ちます。

「利用率が2~3割だったら、競合他社にスイッチングされます。しかし、限りなく100%に近ければ、競合が値引きしても、当社のタブレットを使い慣れている現場が反対するので、経営陣もスイッチングできません」(朝倉社長)

こうしてタブレットの利用先をどんどん囲い込んでいき、並行して利用フェーズを引き上げていくことで、定額収入を安定的、かつ段階的に積み上げていくことを狙っています。

メディアでは課金モデルも視野

メディア展開でも、サブスクライバーモデルを加速させています。

4月には、スマートフォン向けの仮想通貨専用アプリ「My 仮想通貨」をリリース。1,600種類以上の仮想通貨について、リアルタイムの取引価格や関連ニュース、どこで取引するとスプレッドが抑えられるか、などの情報を取得できます。また、米国最大手の仮想通貨メディア「コインデスク」とも連携し、翻訳記事を配信しています。

5月には「株式新聞」のアプリ版を投入予定。モバイルに最適化したUI(ユーザー・インターフェース)に改め、携帯端末経由でのユーザー囲い込みを進める意向です。

「仮想通貨アプリをダウンロードする層は、FXや個別株を売買している人が多いとみています。新しい層を引きつけて、資産形成に関するエデュケーションをやっていきたい。最終的には、投資信託アプリが60万ダウンロードで、そこに仮想通貨で数十万、株式新聞も加わることで、100万ダウンロードまで引き上げます」(朝倉社長)

そのうえで、現在は個別に展開しているアプリを連携させ、トータルな情報ベースを構築。一部を有料課金にすることで、メディアでも定額収入モデルを確立していく方針です。

もはや投信だけの会社ではない?

また、メディアのユーザー向けにセミナーを開催し、モーニングスターファンを拡大。セミナーの動画配信や、会員向けのセミナーの開催などで、会員のプレミアム化も進めていく考えです。

「20年間やってきたのは、ブランディングの確立。今では、投資信託をやっている人で知らない人はいないくらいのブランドになりました。これによって、今後5年、10年は非常に楽しみなビジネスができます。マーケットシェアを拡大して、アップセリング、クロスセリングをしていきたい。そして、情報発信を通じてフィーをいただくビジネスを展開していきます」

もはや投資信託だけの会社ではない。そう言わんばかりに強気の姿勢を見せる朝倉社長の号令一下、モーニングスターのビジネスモデルは大きく転換していきそうです。