はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

職場預金で貯めている年360万円ほどのお金と、月々の数万円程度の余剰金を投資に使いたいと思っています。ただ、どういった投資を選んだら効果的なのかがわかりません。どんな点に注目して選べばいいのでしょうか。

〈相談者プロフィール〉
・女性、59歳、既婚(夫:医療専門職)、子供2人
・職業:公務員
・居住形態:持ち家(戸建て)
・手取りの世帯月収:33万円
・毎月の支出の目安:20万円


花輪: 現在、メガバンクの普通預金の利息は0.001%程度、定期預金の利息は0.01%程度です。

預金などの「安全資産」だけでは、高い利回りを目指すことが難しい時代です。できるだけリスクを抑えながらリターンを狙うにはどのようにすればよいのでしょうか。

世界の経済成長に投資をする「国際分散投資」

日本経済は成長が鈍化していますが、世界経済は毎年2%前後で成長をし続けています。東アジア・大洋州地域に絞ると、6%前後の成長が予測されています。

人口構造的に成長が難しい日本にいながらも、世界の経済成長の恩恵を受ける方法があります。それは海外の株式などに投資をするという方法です。日本にいながらも成長著しい国の恩恵を受けることが可能になるのです。

「新興国の株式」と聞くと、リスクが高いように思えるかもしれませんが、分散投資をすることによってリスクを低減させることができます。

また、海外の株式に投資をするとなると、非常にハードルが高いように思えるかもしれませんが、投資信託を利用することによって、初心者でも少額から世界の株式や債券に投資をすることが可能になります。

確定拠出年金のラインナップの中からも外国株式や外国債券を選ぶことができます。銀行やオンライン証券など、身近な金融機関でも商品を購入することが可能です。

“標準偏差”というリスクの見方

預金の利息では満足できないという場合、運用利率を上げるには、運用資産に「株式」などのリスク資産を加えていくことも必要になります。

イボットソン・アソシエイツ・ジャパンの調査によると、日本株の期待リターンは6〜8%、先進国株の期待リターンは7〜9%、新興国株の期待リターンは9〜11%と言われています。成長著しい新興国の株式は高いリターンが期待できるのです。

反面、“標準偏差”と言われるリスクも高く、日本株と先進国株は20%、新興国株は30%とリスクも大きくなります。標準偏差は統計学上の指標のひとつで、過去のデータから求められます。具体的には「年間平均リターン±1標準偏差に収まる確率は68.3%」「年間平均リターン±2標準偏差に収まる確率は95.4%」と見ることができます。

たとえば「期待リターンが7%、標準偏差が20%」の場合、1年後のリターンは「約68%の確率で、プラス27%〜マイナス13%」になり、「約95%の確率で、プラス47%〜マイナス33%になる」ということになります。

振れ幅を把握すれば、不安解消につながる

海外の金融機関で投資用の口座を開設する場合、リスク許容度診断を30分から1時間にわたって行うこともあります。

その人の資産状況、投資経験、投資に対する考え方を反映させ、基本的には許容できるリスクに合わせた商品しか購入できないようになっています。

先ほどの標準偏差を2倍すると、年間の最大損失の目安を計算することができるので、投資額を決める目安になります。たとえば、標準偏差が20%の場合、年間最大損失は40%ということになります。

「株」と聞くと、「損しそう」「こわい」というイメージをお持ちになるかもしれませんが、 具体的な上下の振れ幅を把握することができれば不安解消につながります。

株式と債権に分散投資をしてリスクを低減させる

できるだけリスクを抑えながらリターンを得るには、株式と債券の両方に分散投資を行うことが重要になります。半分を預金や個人向け国債にしておけば、元本の変動に晒されるのは株式に投資をしている残りの半分だけになるからです。

たとえば、下記の通りに資産を分散させた場合、ポートフォリオの期待リターンと標準偏差はどうなるのでしょうか。

・日本債券30%……期待リターン:0.5%、標準偏差:5%
・日本株式40%……期待リターン:7%、標準偏差:20%
・先進国債券10%……期待リターン:1.5%、標準偏差:10%
・先進国株式20%……期待リターン:8%、標準偏差:20%

→ポートフォリオの期待リターン:4.7%、標準偏差:14.5%

つまり、日本株だけを持つよりも標準偏差を下げることができ、期待リターンが低い債券を40%も加えているにもかかわらず、期待リターンは5%近くになります。分散投資をすることによって、リスクを低減させる効果があるのです。

これはポートフォリオの一例です。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、そのポートフォリオをホームページで公開していますが、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%です。こちらのポートフォリオも大いに参考にすべきでしょう。

先進国株式は期待リターンが高く、標準偏差も日本株と同程度のためにポートフォリオに加えたい資産クラスになります。投資に慣れてもう少しリスクを取れるようになったら、新興国株式にもチャレンジしてみるとよいかもしれません。

また、株式は個別株に投資をするのではなく、初心者におすすめなのは十分に分散された「投資信託」を利用することです。投資信託は、複数の企業の銘柄が組み入れられたパッケージ商品なので、個別の株や債券よりもリスクを低減させることが可能だからです。

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