IMF(国際通貨基金)が4月17日に「世界経済見通し」を発表しました。これはIMFが3ヵ月に1度の頻度で発表しているもので、世界全体と国、地域ごとの先行き数年のGDP(国内総生産)成長率見通しが示されています。

定期的に発信されているほか、国ごとの見通しが示されているという点で参考になるデータです。今回発表されているデータについて、検証してみたいと思います。


復調傾向のブラジルと南アフリカ

今回発表分の「世界経済見通し」では、世界全体のGDP成長率は2018年予想、2019年予想ともに3.9%と、前回発表された1月と同水準でした。また国別の予想でも、前回は上方修正が多く見られましたが、このたびの発表では据え置きが目立ちました(下表)。

世界的な投資の拡大や企業の好景気という状況はこれまでと変わっていない反面、米中貿易摩擦の高まりと原油価格の上昇などが不安視されており、現時点では不確定要素となっています。

多くの国で慎重な見通しが目立っている反面、大幅に上方修正された国もあります。主要国の中で特に目立ったのが、ブラジルと南アフリカです。前者は2018年予想が1.9%から2.3%、2019年予想は2.1%から2.5%へ、また後者は2018年予想が0.9%から1.5%、2019年予想が、0.9%から1.7%へと、それぞれ大幅に引き上げられました。

ブラジルについては、資源市況の回復などによる恩恵が見込まれており、南アフリカについては政権交代によって景況感の回復が本格化していることが評価されています。

アジアの高成長をどう見るか

また、IMFよりも前の発表ですが、4月11日にアジア開発銀行がアジア諸国のGDP成長見通しを発表しました。前述のIMFによる世界経済見通しとは異なり、アジアをメインターゲットとして見通しを示しているものです。

このたび発表された見通しをみると、アジア太平洋地域のGDP成長率見通しは2018年予想が6.0%、2019年予想が5.9%となりました。アジア新興国は平均的にインフレに対する耐性が弱いという傾向があるため、直近の資源高によって国内インフレが進行すれば景気押し下げ懸念につながります。

アジア新興国経済にとって、好調な資源市況は現時点ではプラスに作用する部分もありますが、インフレ進行懸念が強まる可能性があるという観点からはマイナス面もあります。今後、各国の消費者物価指数(CPI)の動向が注目されます。

ベトナムの物価動向は要注目

なお、物価に対する感応度の大きい国として、アジア新興国ではベトナムがあります。以前からベトナムの物価変動は大きく、過去には2008年にCPIが前年同月比で30%近い水準まで高まったケースがありました。ほぼハイパーインフレのレベルです。

この当時の時代背景を考えると、2005~2006年頃に世界の中で新興国ブームが盛り上がっていた事に加えて、2007年1月にベトナムがWTO(世界貿易機関)に加盟したことによって、ベトナムに対する海外からの投資が急速に高まった時期です。当時のベトナム市場は経済規模、株式市場規模が今よりもかなり小さかったため、資金流入の急増は、株高、物価高の一因になったと推測されます。

現在のベトナムの状況は、2007年や2008年当時のように、30%近い水準までインフレが進む可能性は少ないと思われますが、ベトナムのインフレの動向は注意が必要です。

直近、ジェトロ(日本貿易振興機構)が2017年の投資環境をまとめましたが、その調査によると、ベトナムに進出している、もしくは今後進出する予定の日系企業にとって、「人件費の高騰」という点が最大のリスクとされています。人件費の問題は、前年もベトナム進出の際の最大のリスクに挙げられていた問題です。

実際、ジェトロの調査によれば、2018年1月時点のベトナム・ホーチミン市周辺の月額賃金は、製造業ワーカーで前年比5.8%上昇、非製造業スタッフで同18.8%の上昇となっています。今後、ベトナム政府は、インフレへの対応だけでなく、人件費高騰に対する対応も急務になると思われます。

(文:アイザワ証券 投資リサーチセンター 明松真一郎)