はじめに
感情的になる前に冷静に立ち止まる
ピンとこない人もいるかもしれませんが、家族や自分の子ども、身近な人の言動に感じるイライラを思い浮かべてみると納得できるのではないでしょうか。
思い通りに動いてくれないメンバーにイライラを感じ、リーダーは時に感情的に「反応」してしまいます。自分の内面にあるメガネに無自覚な場合、それは反射的で激しいものになりがちです。
「口ばかりで行動しないと、信頼されないよ。これはビジネスの基本だよ!」
「知らないことはきちんと知らないと言うこと。そうでないと成長できないよ!」
もちろん相手のことを思っての苦言であり正論なのですが、このような反射的な叱責は相手に伝わりにくいでしょう。「反応」には自分の「メガネ」が影響していて、相手の「ありのまま」ではないかもしれない、と考えられれば、冷静になって一度立ち止まることができるはずです。
相手を知るにはまず自分を知る。リーダーとしての最初のステップだと、中村さんは指摘します。
「保留する」ことで相手は安心して話ができる
自分のメガネを自覚できたら、次は「保留」を取り入れるといいそうです。では、何を保留するのでしょうか。
ある説によると、人は1日あたり1万~5万回の選択をしているそうです。そのほとんどは無意識に行なわれています。そしてそれらの選択は「評価判断」を伴います。人はものごとを評価し、判断して行動するからです。
仕事の現場で考えれば、チームリーダーは、メンバーの言葉や仕事への態度をほとんど無意識に評価判断していることになります。そのなかにはネガティブなものもあるでしょう。
「やっぱり、あいつの言うことはあり得ない」
「だからあいつはダメなんだ」
しかし、こうした評価判断はリーダーが一方的に下したものであって、必ずしも相手の「ありのまま」を受けとめたものではありません。先に述べた「メガネ」や「反応」と同じように、自分のものの見方による評価判断なのです。
このことに気がつかずにいると、相手の話を正しく理解できないだけでなく、相手に「この人は話を聞いてくれない」「この人に話しても無駄だ」と思われてしまい、非常に残念なコミュニケーションギャップが起こってしまいます。
これを回避するのが「保留する」ということなのです。