はじめに

評価判断を横に置いて話を聴こう

中村さんは評価判断を「するな」と言っているのではありません。それは、どうしても頭に浮かぶものだからです。では、どうすればいいのでしょうか。

相手の言葉、1つひとつを受けて、評価判断が頭に浮かんできたら、そんな評価判断があることを認め、受け入れたり受け流したりするのでもなく、横に置いてください。そして、ひたすら、話に耳を傾けてください。次の話を聴いて、また評価判断が出てきたら、それも横に置き、とにかく評価判断は横に置き続けながら話を聴いていきます。
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急がず、焦らずに「保留」しながら聴く。こうすることで、相手は「否定されない」と安心し、思考が整理されて、間違いに気づいたり、発想を広げたりすることができます。つまり相手の自主性を引き出すことができるのです。

一生懸命なリーダーほどメンバーへの指導に熱心ですから、相手の話に評価判断をはさまずに聴き続けることに抵抗を感じるかもしれません。しかしその評価判断が、必ずしも相手のありのままの姿ではない、という考えがあれば、難しいことではないはずです。

メンバーと本当の意味で理解し合うためには、相手の言動にすぐ評価判断を下すのではなくそれを「保留」し、「いつか理解できる」という気持ちを持って話を聴くこと。それがメンバーの心を開くことにつながるのです。


チームが高いパフォーマンスを維持するには、メンバーが自律的に動かなければなりません。そのためにはメンバーをよく知り、信頼関係を築き、いつも自然体でいることのできるリーダーが求められる。現場での経験に裏打ちされた中村さんの指摘は、いままでとは違うリーダー像を提示しています。

なぜ、「すぐに決めない」リーダーが結果を出し続けるのか? 中村一浩著


「速さ」だけでは、長期的な成功を望めない。ミスミで事業戦略を徹底的に学び、リクルートでモチベーションの根源を突き詰めた著者が、15年かけて導き出した、「迷いがなくなり」「チームに活気が戻り」「結果が自然とついてくる方法」を実践的に解説。

記事提供/日本実業出版社

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