はじめに
店舗名統合と店舗統合は違う
実は、今回の報道のポイントのひとつは「店舗名統合」と強調しているところです。決して「店舗統合」とは言っていません。
簡単に言えば、サークルK・サンクスの看板を降ろしてファミマの看板を掛けかえて、店員さんの制服を変更すれば店舗名統合は完了します。「店舗名が変わりました」で作業は終わります。しかし店舗統合にはその先、さらに大変な課題が待っています。
たとえば情報システムの統合。サークルK・サンクスの受発注や営業管理といった情報システムをファミマに切り替えるには、システム側の増強もそうですが、店舗の側のトレーニングもやり直さなければなりません。
店舗の側も場合によってはPOSを入れ替えなければならないなど、投資にもお金がかかります。
そして当然のことですが、商品の統合や仕入れの統合はその先の作業になります。まず店舗名が統合して、次にシステムが統合されて、それで商品や仕入れが統合できたらようやく「店舗統合」が完了するのです。
名前を変えることで統合に必要なエネルギーがかなりの部分節約できる
もともとのゴールがセブンイレブンを商品面で追撃することにあるわけですから、ファミマとしてはなるべく早くそこに到達したいのです。
ところが統合される現場同士はそうも簡単には行きません。サークルK・サンクスの現場には長年慣れ親しんだ「サークルK・サンクス愛」が強くしみこんでいます。だから経営統合にはものすごく大変なエネルギーを必要とします。
そこで、まず最初に名前を変えるのです。名前を変えてしまうと不思議なもので、組織というのは一体感を持ち始めるものです。これまで敵同士だったふたつの組織が、名前を変えることで同じ陣営の仲間の意識を持ち始め、共通の敵であるセブンイレブンを追撃する気持ちが芽生え始めるのです。
そこが始まり。つまり店舗名をまず、これから一年半の間に変えてしまって、それから、このコラムの前半で述べたような本格的な「店舗統合」に力を入れたい。なるべく早くそこにたどり着きたい。ファミマの社長はそういう意味のことをおっしゃっているというわけです。