はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

現在、53歳です。老後に備えてiDeCoに加入したいと思っていますが、年齢が気になります。今から始めてもお得になるのでしょうか。

〈相談者プロフィール〉
・女性、53歳、既婚、子供2人
・職業:パート・アルバイト
・居住形態:持ち家(マンション)


花輪: ご相談ありがとうございます。

iDeCoを50代で始めるときの注意点

iDeCoの最大のメリットは税制優遇が大きいことが挙げられます。以下の3段階での税制優遇が受けられます。

1.拠出時: 拠出した金額が全額所得控除され、所得税率が10%の人の場合は住民税と合わせて20%の節税効果。

2.運用時: 一般的な預金の口座や証券口座では利益に対して約20%の税金がかかりますが、この制度では非課税。

3.受取時: 年金受け取りの場合は公的年金等控除が、一時金受け取りの場合は退職所得控除が適用される。

ただし、この制度の最大の注意点として、拠出したお金は原則60歳まで引き出せないという点があります。

さらに、加入期間が10年未満だと受給開始が可能となる年齢が60歳ではなく61~65歳になる点が、相談者の注意事項になります。

相談者のように、53歳で始めると、62歳以降(8年以上加入者期間がある場合)でないと受け取れないということになります。掛金の拠出期間は短くはなりますが、節税効果は大きいので口座開設や口座管理手数料を支払っても加入を検討する価値はあります。

iDeCoの節税効果はどれくらい?

節税効果はどれくらいあるかというと、毎年50万円拠出する場合で、所得税率が10%の場合、住民税(10%)と合わせて、年間で約10万円の節税効果があります。

元本保証で運用して利回りがほとんどなかったとしても、年間で拠出した金額の20%の利回りが得られるような効果が出るのです。税金をたくさん支払っている人は、この制度を活用してぜひとも節税したいものです。

海外で働く高収入のビジネスパーソンは似たような制度を活用して節税していることが一般的です。私が住んでいるシンガポールでも税制優遇制度がたくさんあり、その口座を使って運用をして老後資金を育てています。

子供の教育費など、まとまった金額が必要で「近い将来使う予定のあるお金」はNISA(少額投資非課税制度)など、取り崩しのルールが緩やかな別の税制優遇制度を活用し、毎年の旅行など「すぐに必要だけどプールしておきたいお金」は金融機関の通常の口座などを利用するなどし、お金に色を付けて、目的に合わせて上手に制度を使い分けるとメリットを最大限に受けることができます。

実は50代からは「人生の貯め期」

実は多くの人にとって50代は人生の貯め期なのをご存知でしょうか。50代というと、子供の教育費にも住宅ローンの支払いにも目処がつく頃だからです。この時期にラストスパートで老後資金を作っていきましょう。

そのための制度としてiDeCoは向いています。取り崩しが難しいので強制力があるからです。また、10年以内に受け取りが開始されるというのもメリットでしょう。

よく若ければ若いほど長い期間拠出できるからメリットがあるという意見を耳にしますが、デメリットとして長期間引き出しが難しいということが挙げられます。

先の人生が長いと不確定要素が大きいために拠出額を大きくすることが難しくなります。ですが、拠出期間が短く、余裕資金が多いのであれば月々の拠出額を大きくすることも可能でしょう。50代から老後準備をするのは決して遅くはありません。

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