はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。
医療保険について相談させてください。現在入っている医療保険はあと10数年で払込が終わり、70歳の時に解約金が300万円となり、その後解約金は歳をとるごとに減っていくそうです。そこで、70歳の時にこの保険を解約しようと考えています。その際に70歳から新たに掛け捨て医療保険に入った方がいいのか、死亡保障の手厚い保険に入った方がいいのか、保険に入らずにその分の貯金をする方がいいのかを教えてください。現在は医療保険以外の保険には入っていません。
〈相談者プロフィール〉
・女性、42歳、既婚(夫:会社員)、子供2人
・職業:パート・アルバイト
・居住形態:持ち家(マンション)
・手取りの世帯月収:55万円
・毎月の支出目安:45万円
花輪: まず、何のために保険に入りたいのか目的を考えてみましょう。
保険は「遺族保障」や「相続対策」には有効だけど……
死亡保険は家族のための保険です。遺族保障としてなら、たとえば扶養している子供の年齢が低く、万一の際にお金を残したいというときに有効です。ただ、28年後に70歳になると考えると、そういった目的は考えにくいでしょう。お子さん2人が独立している年齢だと推測されるからです。
相続税対策のために死亡保障金を活用したいという人の場合は、死亡保障金額を手厚くするのもひとつでしょう。ただ、相続税の対象になるかどうかを考えてみましょう。
相続税の対象になる人は12人に1人程度です。2015年以降、相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となり、相続人が2人のケースでは基礎控除は4,200万円になります。
自宅の土地を相続する場合、一定の基準を満たすと限度面積の330平米まで土地の評価額を80%減額してくれる「小規模宅地等の特例」があります。評価額1億円の土地を相続したとしても、特例を受けることができれば評価は80%オフの2,000万円になります。
そんなに資産がないという場合は、特に大きな死亡保障をかける必要性がないのではないでしょうか。葬儀代にと考えているのであれば200万円程度を貯金で残すので十分でしょう。
70歳以降の新規加入は保険料が高額に
医療保険に関しても貯金で医療用の備えを作るという方法もあります。高額療養費制度を利用すれば医療費の自己負担は1割程度で済むからです。300万円程度医療費用の貯金に加えて公的年金があれば、老後の医療費にも備えることができます。
70歳になってから医療保険や死亡保険に入ろうとすると、月額の保険料が高額になります。現在入っている医療保険に関して、70歳以降は解約返戻金を原資にして医療保障が継続するという形だと推測しますが、保険証券がないと正確な回答ができないので、保険会社に確認をして契約を確認してみてください。
その時点で、医療保障が必要だけど新規で契約をすると高額になるのであれば、現在の契約を継続させればよいと思います。すべて数字に置き換えて考えてみるとシンプルです。
複雑なのでわからないという場合は、保険を得意とする独立系のファイナンシャルプランナーに相談をするのも手です。中立性を確保するためにも、有料相談になっても独立系のFPが良いかもしれません。