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日大アメフト問題に見る、「危機管理広報」失敗の本質

“他山の石”とするには?

連日、日本大学アメリカンフットボール部の問題がテレビで報道されています。世間一般のとらえ方としては、直接の加害者である宮川泰介選手の会見が賞賛を集めたのに対し、前監督・前コーチや大学側の対応は不誠実そのもの、といったところでしょうか。

7万人以上の在校生がいる日本一のマンモス大学が、大学組織が危機に瀕した際の対処の方法をまるでわかっていなかったことを露呈してしまいました。日大には「危機管理学部」という学部がある、ということも何とも皮肉な話です。

日大はどう行動すべきだったのか。企業に危機管理広報のアドバイスをしているコンサルタントの話を基に考えてみます。


リスクなのか、クライシスなのか

危機管理の世界には「リスク」と「クライシス」という専門用語があります。リスクは、発生している事象が何らかの対応を必要とする事象であって、なおかつ報道されていない段階。クライシスは、すでに報道されてしまっている段階のことを指します。

リスクもクライシスも、組織の意思決定機関がその事象の発生に気付いてからやらなければならないことは同じなのですが、リスクで終わらせることができるものはリスクで終わらせるように行動することが求められます。

危機に瀕した際の組織の意思決定機関とは、株式会社なら取締役会です。トップの不祥事なら監査役会か、社外取締役がいる会社なら社外取締役です。

日大の場合は、理事会がこれに相当します。文部科学省のホームページに掲載されている理事制度の説明によれば、理事は「学校法人を代表するとともに、学校法人の業務を決定する権限を有する重要な機関」となっています。


「理事」についての説明が掲載されている文部科学省のホームページ

今回の日大の不祥事は、当事者である内田正人前監督が常務理事でもあるので、本人を除く理事全員でコトに当たらなければならないはずでした。中でも理事長はリーダーシップを発揮すべきだったのに、これまでのところ、表には出てきていません。

そもそも、意思決定者もしくは意思決定機関に、発生した事象がリスクだと感じるセンスがなければ、その時点でアウトです。リスクだと思わないのですから、何も対処をせず、そのうち報道が出てクライシスの段階に突入しても、なぜ世間が、マスコミが、大騒ぎをするのかわからないまま、大炎上してしまうからです。

リスクだと感じるセンス。それは世間の常識とその組織の常識に乖離がない人でなければ、持ち合わせていません。世間では「許されないこと」なのに、「この程度のこと」と思う時点でアウトなのです。

センス=「人の気持ちがわかるかどうか」

センスの有無はとことんついて回ります。

不祥事を察知して最初にすべきことは、ステークホルダーの洗い出しと情報収集です。正確に、余すことなく、すべてのステークホルダーから迅速に情報を集めなければなりません。

この段階でもセンスが問われます。センスがないと、ステークホルダーが誰なのかを理解せず、情報収集する対象を狭めてしまうからです。

今回の例でいえば、加害者、被害者、現場に居合わせた双方のチームメイト、審判、両チームの監督、コーチなど、事実関係を把握するためにヒアリングすべき対象はもちろん、発生した事象に直接関係はなくても、それによって不利益を被る可能性がある人たちもすべて情報収集の対象です。

たとえば、大学の教職員や在校生の父母、OBなどもステークホルダーです。私立大学の場合、父母やOBは多額の寄付をしているはずですから、なおさらです。教職員組合や父母会、同窓会組織の代表などへの配慮に思い至るかどうかで、センスの有無がわかります。

日大アメフト部が所属している関東学生アメリカンフットボール連盟も、事実関係を説明しに行くべき対象なのですから、重要なステークホルダーです。それぞれの立場でその人たちがどう思うのか、つまりは「人の気持ち」がわかるかどうかが問われるのです。

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