はじめに

「よし!フリーランスとして働くぞ」そう思って会社を辞め、独立したのはいいけれど、フリーランスになると会社員時代には必要なかった手続きがたくさん出てきます。

そのうちの一つが、「確定申告」。フリーランスとしてお金を稼いでいくなら、税金の理解、特に確定申告について理解することはとても重要です。

しかし、「税金のことって、なんとなく面倒でよくわからない」と苦手意識を持っている人が多いようです。税法学者でさえも、「税法は複雑怪奇である」と言っているほどですから、皆さんが税金に苦手意識を持ってしまうのは当然といえば当然かもしれません。

ここでは、新たにフリーランスになった方に向けて、確定申告についてのお話を、できる限り“やさしく、わかりやすく”お伝えしていきたいと思います。4回シリーズのすべてを読み終えたら、「これで確定申告についてはバッチリだ!」と思っていただけることを目指します。

なお、会社を設立したという方については、対象外としておりますのでご了承ください。


そもそも「確定申告」とは?

フリーランスになって、何も手続きをしないままだと、確定申告は「白色申告」ですることになります。

「確定申告?」「白色申告?」――まずは1つ1つの言葉の意味を確認していきましょう。ここで言う「確定申告」とは、所得税の確定申告のことをいいます。

所得税とは、ざっくりいうと“個人が何らかの方法でお金を稼いだときに課される税金”です。たとえば、銀行預金の利子もお金を稼いでいることになるので、所得税が課されます。極端にいえば、生きている限り支払いが発生する税金――それが所得税です。

確定申告とは、その名の通り“税額を確定して税務署に自己申告”することです。

所得税法では、税金を納める人(納税者)が暦年で所得金額と税額を自ら確定させる「申告納税方式」を採用しています。日本において、お金を稼いだ個人は原則、毎年3月15日までに自分で確定申告をしなければなりません。

「あれ? サラリーマン時代は一度も確定申告なんてしたことなかったけど?」

それもそのはず、給与による収入が2千万円以下の給与所得者(いわゆるサラリーマン)は、会社が年末調整をするので、特例で確定申告をしなくてもよいことになっています。

しかし、フリーランスは会社組織に属していませんので、自分で確定申告をしなければなりません。

青色申告と白色申告、何が違う?

「確定申告って、なんだか面倒だなぁ……」と思うかもしれません。ですが、確定申告は納税者にとっての義務であり、また権利でもあります。確定申告の種類について見ていきながら、確定申告をするメリットについて考えてみましょう。

所得税の確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。この2つの違いを知ることがポイントです。

青色申告の制度は、昭和25年のシャウプ勧告に基づく税制改革の時代にできました。青色申告制度は、納税者が戦後の日本で正しい記帳に基づく適正な申告と納税を行うことを推進する趣旨で設けられた制度です。そのため、青色申告を選択した納税者にはさまざまな特典が準備されることになりました。現在の青色申告制度でも同様に、種々の特典が用意されています。

青色申告を選択した場合の主な特典として、次の3つがあります。

(1)青色申告特別控除

所得税の計算式をものすごく単純化すると、次のようなイメージです。

収入-経費=所得、所得×税率=税額

青色申告すると、単式簿記で最大10万円、複式簿記で最大65万円を上記算式の「所得」から減らしてもらえるので、税金が安くなります。単式簿記と複式簿記の違いは「貸借対照表」を作成するかどうかです。

複式簿記はアプリやソフトを使えば、それほど難しいものではありません。

(2)30万円未満の少額減価償却資産の必要経費算入

仕事用のパソコンなどの備品を購入するとき、白色申告では、10万円以下の購入分しか一度に経費として認めてもらえません。青色申告なら、30万円未満の備品等で年間合計300万円までを一気に経費とすることができます。

(3)純損失の繰越し

フリーランスの場合、毎年の売上を安定させるのは難しいと思います。「今年は赤字になってしまった……」そんなときに、青色申告なら赤字を翌年以後3年間繰り越せる、つまり、黒字になった年に過去の赤字分を差し引いて税金を計算してもらえます。

「青色申告の特典の話はわかったけど、やっぱり白色申告の方がラクなんじゃないの?」

そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、平成26年度からは白色申告にも記帳と帳簿の保存義務が課されましたので、白色申告でも結局やることは青色申告の場合とほとんど変わりません。つまり、白色申告であることのメリットは、今ではほぼないといえます。

以上から、フリーランスとして働く場合、青色申告を選択した方が有利です。青色申告することで、確定申告という権利を行使することによるメリットを享受しましょう。

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