はじめに
「天気が良い→株高」のメカニズム
ではなぜ、天気晴朗ならば株高しとなったのでしょうか。これが行動経済学から説明できるのです。
簡単に言えば、天気が良い時は、人々の気持ちが前向きになるため、楽天的な姿勢で投資しがちになり、買い先行になるということです。一方、天気が悪い時は、ネガティブな気分になるため、投資家の姿勢が積極的になりにくいことが理由です。
実際に、雨の日を考えて見ましょう。朝の通勤も「ちょっと嫌だな」と思う人も少なくないでしょう。傘を持って歩いていても、服も濡れたりします。それに通勤電車が混雑していると、傘を服に付けられて、なんだか、服がびしょびしょになっていることもあるでしょう。
また、地下道など歩いていると、傘を大きく前後に振り回して歩く危険な人もいたりしますし、雨の日は朝から気持ちも今一つになる人も多いでしょう。投資する時にも、気持ちが前向きになりにくいものです。
このように雨の日に株価が安いことが実証されているのですから、気になるのは梅雨時期の株式相場です。梅雨の時期は雨が多いのですから、株価が安くなるという仮説を立てることができます。
そこで、気象庁が公表している梅雨入りと梅雨開けのデータを使って、1970年から梅雨の期間の日経平均の騰落率を調べました。すると、騰落率はプラス(0.25%)となり、梅雨期間に上昇した割合は57%です。予想外で梅雨の期間の株価は高いという結果でした。
雨が特に多いと株価は高い
もう少し深く考えてみました。梅雨といっても、カラ梅雨の時もありますし、晴天が続くのになかなか梅雨明けしない記憶を持っている人もいるでしょう。そこで、もう少し分析を深めてみます。
雨の量が多い梅雨と、少ない梅雨で分類してみることにしました。梅雨の時期とはいえ、雨が少なければ、株価が高くなると考えてみました。
すると、結果は予想通りとなります。平年の8割未満しか雨の量がなかった梅雨では、株価が高くなり、梅雨期間の騰落率平均は1.5%、勝率は7割近くになりました(69.2%)。逆に、雨がいつもか、それよりも多い梅雨は、株価はマイナスです。
ただ、少々ややこしい結果にもなっています。雨が特に多く、平年の2割増の梅雨の時は、平均騰落率がプラスとなりました。また、勝率も6割を超えています。
今年の雨量はどうなる?
結果を整理してみましょう。雨が少ない梅雨の期間は株価が高く、雨が多い梅雨は株価が安いという基本的な関係があります。ただし、雨がホドホドではなく特に多くなると、株価が高い、という結果です。
これは、雨が特に多ければ、傘の販売が増えるなど、雨関連の業界が潤うことも理由にあるでしょう。また、最近は梅雨用のファッションも注目されており、さまざまな産業で需要が高まるからかもしれません。こうしたことは景気にとってプラス効果に働くとみられます。
さて、今年の梅雨の雨量はどうなるでしょうか。気象庁は5月25日に6月の雨量の予測を公表しました。その予測では、関東甲信地方の雨が少なくなる可能性は20%と、ちょっと相場には気掛かりです。一方、雨が多くなる確率が40%となっており(残りの40%が平年並みとなる確率)、もしかしたら、特に雨が多い梅雨となれば、株高になるのかもしれません。