はじめに
悲惨なバンコクのユニクロ店舗
さらにアジアに行くとユニクロの店舗は悲惨な状態になる。今年の1月に出張でタイのバンコクに行ったときのことだ。日本では真冬だが、出張当時のバンコクの気温は25度くらい。長袖のシャツを着ていったが、それだと街中はうだるような暑さで、現地人は皆、一様に半袖のポロシャツで過ごしていた。
そのバンコクでユニクロの店舗に入るとお客はおらずお店はがらがらなのだが、それも無理はない。日本と同じ商品ラインを販売しているのだ。
つまりみんなが半袖を来ている場所で、ダウンジャケットやコート、ウールのセーターなどが店頭に並んでいる。この店で購入できる商品で、私が仮に今すぐにバンコクで着て町を歩けるものといえば、ぎりぎり冬物のワイシャツが通用するかどうか。
これは明らかに現地の責任者に商品開発の権限が与えられてないから起こる珍現象だろう。もう少しはっきり言えば、この国に投資を決めた責任者がろくに現地を視察もしないで億単位の投資をしているからおきる馬鹿げた現象だ。
ニューヨーク、パリはどうだろう?
さて、気を取り直してニューヨークのユニクロを見ると、ブランド的にはそれなりに頑張ってマーケティング投資をしていることがわかる。地下鉄や主要駅にはユニクロの広告をよく見かけるし、市内でも有数のブランド力があるニューヨーク近代博物館のスポンサーになることで知名度も高まっている。
そこまで努力をしていて、実際の店舗の状況を見ると、来店客の数はかなりさびしい状況だ。
これはいろいろと原因があるのだが、仕方のない面を言えば、ニューヨークが世界最大のファッションブランド同士の激戦地であるがゆえに、競争を考えるとユニクロが望むようなブランド地位に到達するのは並大抵のことではない。つまり競争が厳しいのだ。
とはいえ、基本的な問題はやはり日本と同じ品ぞろえで勝負をしているということだろう。デザイン的にはニューヨーカーの好みにあっていない。ないしはサイズがあっていないという問題があって、基本的にユニクロはニューヨーク在住のアジア人向けのお店にとどまっているように思われる。
パリのユニクロとなるとそれ以上に厳しい。明らかにユニクロ以外の競合店で売られているファッションアイテムの方が魅力がある。パリジャンは10着しか服を買わないという話があるが、本当にそうだとしたらパリジャンはユニクロ以外の服を選ぶだろう。
以上はあくまで私が海外出張の際に空き時間でユニクロの店舗を眺めた範囲内での観察事実なので、当たっている部分と外れている部分はあるかもしれない。ただ現象としてこれだけ海外の店舗を見てはっきりとした不振が目にとれるところを考えると、これはやはり現地に権限を与えずにただ日本の商品をもっていって海外展開を推進している経営者に問題があるとしか思えない。
ユニクロはこの点が変わらない限りは、3兆円は難しいのではないだろうか?