はじめに

「いわゆる反社取引に関して言えば、bitFlyer(ビットフライヤー)は真っ黒だ」。ある金融庁幹部は、こう漏らしました。

6月22日、金融庁は仮想通貨交換業の登録業者6社に対して、改正資金決済法に基づく業務改善命令を出しました。立ち入り検査の結果、内部管理態勢やマネーロンダリング(資金洗浄)対策に不備があったとして、各社に7月23日までに業務改善計画を提出するよう求めています。

これまで問題とされてきた「みなし登録業者」ではなく、金融庁の審査を通った「登録業者」に対する一斉行政処分。その中には、業界最大手といわれるbitFlyerも含まれていました。金融庁は、一度はお墨付きを与えた仮想通貨交換業者のどこに問題があると指摘したのでしょうか。


共通する問題点は何か

今回、業務改善命令が発出されたのは、bitFlyer、QUOINE(コイン)、ビットバンク、BTCボックス、ビットポイントジャパン、テックビューロの6社。いずれも金融庁の登録審査を通過した仮想通貨交換業の登録業者です。テックビューロについては、3月8日に次いで2度目の業務改善命令となりました。

各社で状況は異なるものの、共通するのは「内部管理態勢の不備」「利用者保護措置の不足」、そして「マネーロンダリングなどの違法取引防止態勢の不備」です。

金融庁は「昨年秋以降、業容拡大する中で各社とも収益は上がっていたが、適切な態勢構築を行わなかった」としています。さらにbitFlyer、QUOINE、BTCボックスの3社については、検査の結果「(反社会的勢力と)疑わしい取引があった」と明らかにしました。

このうち、QUOINEでは反社らしき取引はあったものの、取引時本人確認が不十分であったため、明確にクロかわからない状況。一方、bitFlyerについては金融庁が反社取引を確認。BTCボックスに至っては、そもそも同社内に反社リストを保有していなかったといいます。

bitFlyerには異例の指摘

さらにbitFlyerには、経営管理態勢についても異例の指摘を行っています。

「監査等委員会および取締役会が牽制機能を発揮していないこと並びに登録審査等に関して当局等へ事実と異なる説明等を行うといった企業風土など、当社の経営管理態勢に問題が認められた」(金融庁公表資料)

本来なら経営を管理する機能を担う取締役会が創業者の知人で占められ、十分な牽制機能が果たせなかったというわけです。今回の業務改善命令を受け、bitFlyerは新規顧客の受け入れを当面停止し、改善計画の実行を優先すると発表しています。

金融庁が処分に込めたメッセージ

今回の処分がこれまでの仮想通貨事業者へのそれと大きく異なるのは、処分対象となったすべての業者が金融庁の審査を通過し、登録業者となっていた点です。当然ながら、登録を認めた金融庁の責任を問う向きもあります。これについて、金融庁は次のような見方を示します。

「登録時点において、提出された書類や説明に基づいて審査した結果、法に定められた登録拒否の要件に該当する事実は認められませんでした。ただ、その時点でも、内部管理態勢に課題があることを伝達し、モニタリングしてきました。特に昨年秋以降、仮想通貨の取引が急激に拡大したため、それに応じた態勢整備ができていない状態が発生しました」

そのうえで、「収益が上がっているのだから、内部管理態勢にもリソースを配分するべきでした。今回の事例を踏まえて、登録後のモニタリングやプロファイリングを精緻に、機動的にやっていきます。仮想通貨を取り巻く環境変化を分析したうえで、改善していきたい」としています。

こうした金融庁の姿勢から読み取れるのは、「金融業者としての自覚を持って、態勢整備やガバナンスの構築をやり直せ」という強いメッセージです。これは、今回処分を受けた6社だけでなく、処分を受けなかった業者やこれから登録を申請する予備軍にも向けられたメッセージと考えられます。

改善計画の提出期限は7月23日。4月には16社が集まり、新たな自主規制団体「日本仮想通貨交換業協会」が発足。自主規制ルール案の策定を進めていますが、まずは個社ごとの自浄作用が注目されるところです。

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