はじめに
首都圏は梅雨が明け、早くも暑い夏がやってきました。関東甲信地方が6月に梅雨明けするのは気象庁の統計開始以来、初めてのことです。今年の夏は猛暑の予想で、この先もまだまだ暑さが続きそうです。
こうなると、株式市場ではサマーストックの出番です。猛暑となるとビール、飲料、アイスクリーム、エアコンなどが売れるから、それらの関連企業に注目が集まります。しかし、暑い夏が来るなら猛暑関連銘柄を買おう!というのは、かなり素人的発想です。
サマーストックでも値動きはまちまち
相場の格言では、「麦わら帽子は冬に買え」といいます。季節によって大きく売り上げや業績が変動するシーズンストックは、オフシーズンに購入しておき、オンシーズンに売却するのが定石。冬に麦わら帽子を買う人は少ないので、安く手に入るわけです。
株式も同じように、市場の注目が低い時は安く買えます。夏が来てからサマーストックを買っても遅いのです。
また、暑い夏が来るからといってサマーストックならすべて良い投資対象か、という問題もあります。下のグラフは、ビールでキリンホールディングスとサッポロホールディングス、アイスで名糖産業と森永乳業、エアコンでダイキン工業と富士通ゼネラルの組み合わせで年初来の推移を見たものです。
キリンは年初来かろうじてプラスですが、サッポロは年初来2割以上の下落です。名糖産業は年初来6%超の上昇ですが、森永乳業は24%もの下落。ダイキンは年初来4%程度のマイナスですが、富士通ゼネラルに至っては約3割も株価が下落しています。
年初来3割安といえば、日経平均に直せば7,000円近い下げで、今頃1万6,000円を下回る計算になります。暴落といっていい水準です。サマーストックとはいえ株価の動きはまちまちで、銘柄選択次第ですごく差がついてしまいます。
梅雨時期の不振でニトリは株価急落
暑い夏の到来に賭ける投資法でも、ここでは逆張りをご紹介します。それは、足元では売られて株価が下落している小売り株への投資です。
たとえば、しまむら、西松屋、ニトリホールディングスなどです。これら小売り株は6月の月次販売データが発表されたところから急落するものが目立ちました。昨年より梅雨入りが早く、雨や気温の低い日が多かったため、夏物の販売が伸び悩んだことが背景です。昨年より日曜日が1日少なかったことも影響しました。
特にひどいのがニトリHDです。同社は6月下旬まで右肩上がりで推移し、連日高値更新が続いていました。しかし、22日に発表した6月の既存店売上高が4.5%のマイナスと、2016年12月以来の落ち込み幅になったことが嫌気され、急落しました。
その後発表した2018年3~5月期の決算で、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比18.3%増の304億円となりました。家具や生活雑貨の販売が好調で、市場予想平均も上回り、同期間では2年ぶりの増益となりました。このような良好な決算を発表しても、市場では「材料出尽くし」と見られ、下げ止まりません。
実際には6月の月次販売データで売られて以来、下げに勢いがついてしまったというのが正直なところでしょう。しかし、ここは冷静になるところです。
一時的要因で株価低迷なら反発期待
昨年より梅雨入りが早く、雨や気温の低い日が多かったため夏物販売の出足が鈍かったことが6月の販売不振の原因なら、梅雨明けがかつてないほど早いこの7月は反動で夏物が売れるでしょう。7月の販売データが発表されれば、これまでの下げが急ピッチだったこともあって、相当程度の反発が期待されます。
そのほか、2月決算の小売り各社の3~5月期決算発表が佳境を迎えています。今日は良品計画、イオン、ABCマートなどの決算が発表されます。ABCマートも年初来安値更新が続いています。梅雨の時期にサンダルが売れなかったといいますが、売れるのはこれからでしょう。
天候など一時的要因で株価低迷が続く小売り株は、猛暑効果で反発が期待できると思います。
(文:マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆)