はじめに
読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は前野彩氏がお答えします。
社会人2年目になり、忙しかった1年目の反省から、お金の管理を始めることにしました。現在、会社寮で一人暮らししており、毎月2~3万円の貯金をしていますが、友人の結婚式やら引っ越しやらで、貯金がすぐになくなってしまうような状態です。
そんな中、ボーナスで1年分の貯金額になりそうな金額が振り込まれました。それほどお給料が上がることも期待できない中、今後、貯金はボーナス頼みになるような気がしています。今の生活で、さらに節約をするとなると、職場での付き合いや長期的なキャリアのためにやっていることを削ることになってしまうのですが、ボーナス頼みの貯金は再考したほうがよいのでしょうか。
〈相談者プロフィール〉
・女性、20代前半、未婚
・職業:会社員
・居住形態:会社寮
・手取り世帯月収:26万円
前野: 現在の仕事に加え、長期的なキャリアを見越したスキルアップや人付き合いをされているとのこと。その視点は大切ですね。
節約貯蓄ではなく、将来の選択肢を増やすための貯蓄を
自分の将来が大事であるからこそ、同時進行で行うのが、未来のための貯蓄です。将来、お金がなくてやりたいことを諦めることがないように、本当に必要な支出の優先順位を確認してみましょう。
削ることに抵抗感をお持ちの職場でのお付き合いは、「将来のために必要な人間関係」なのか、それとも、「波風を立てないための付き合い」なのかを意識しながら、その内容や予算、回数を考えてみませんか。
また、失礼ながら、「将来のため」の中には、キャリアや収入を生むものではなく、ライフワークや趣味のスキルアップになっている方もいらっしゃいます。もしも曖昧になっていたら、期日や期限などの目標を明確すると、実現が早まりますよ。
頑張って仕事をして手にした収入だからこそ、交際費やスキルアップの優先順位をつけて、将来の自分の選択肢を増やすための貯蓄を始めましょう。
特別支出はボーナスから捻出
友達の結婚式に引っ越し、家電製品の買い替えなど、予定外の支出は発生しますよね。ご相談者さんは20代前半とのことですから、これからが友達の結婚ラッシュかもしれませんし、自分の結婚も待っているかもしれません。
そこで、1年間にどんな支出があるのかを、洗い出してみましょう。
ちょうど今年に入って半年が経ちましたから、上半期の予定を振り返れば、何月頃にどんな支出があったのかを振り返ることができます。また、下半期についても、「結婚式にあと2件招待されているから、ご祝儀と美容院で1回4万円、合計8万円は使いそう」というように、支出の予定が立つ頃でしょう。
そこで、スケジュール帳をもとに、想定できる1年間の支出を月ごとに書き出してみましょう。ノートやスマホのメモなどに、普段の家計と異なる支出について、「11月お正月と帰省費用で5万円、バーゲンで5万円」というように、何月にどんな支出があったのか、あるいは、予想できるのかを、1年間の一覧表にしてみてください。そうすることで、毎月はかからない「特別支出」の年間総額が出てきます。
年間総額がわかったら、その金額をボーナスから差し引いてみましょう。すると、残ったお金は意外に少なくありませんか。実は、臨時収入だと思っていたボーナスの使い道は、意外と決まっているもの。
ボーナスがメインの貯蓄は管理が難しいため、将来のための貯蓄をするのなら「毎月コツコツ、ボーナス上乗せ」で考えることが、目標額への近道ですよ。
ラクして貯まる貯蓄のしくみ
確実に貯蓄をするために大事なことは、“ラクすること”です。
目標を高く持つことは大切ですが、仕事に、プライベートにと忙しい毎日の中で、「ボーナスが入ったら、○万円貯蓄しよう」と記憶して、行動するのはなかなか大変です。
そこで使うのが「自動積立」の仕組みです。
自動積立は、毎月積み立てするのがキホン。そして、その毎月の積み立てがあるからこそ、ボーナス時の増額も可能になります。“気が付いたら貯まっていた!”というのが、自動積立の良いところ。目的に応じた自動積立で、ラクしてお金を貯めましょう。
【自動積立の主な種類】
・自動積立定期預金:使う目的は自由。給料振込口座で行うことが一般的。
・財形貯蓄:職場に財形貯蓄があれば利用できる。給料天引きで貯めやすく、引き出しにくい。
・iDeCo(個人型確定拠出年金):60歳以降の老後資金目的。掛金全額が所得控除になり、節税しながら貯めることができる。運用益が非課税。
つみたてNISA:投資信託の積み立て。運用益が非課税。
・百貨店友の会積立:買い物をする百貨店が決まっている人限定。1年間積み立てると、1カ月分のボーナスが付く。
・旅行積立:旅行会社が決まっている人限定。満期時には1.5~3%ほど増える。
家賃の差額分で「なかったつもり貯金」
最後に。寮にお住いのご相談者さんの寮費は、通常の賃貸物件よりも安いのではないでしょうか。現在貯めている月額2~3万円に加えて、近隣の賃貸物件相場との差額を「なかったつもり貯蓄」として貯める家計を作ると、一気に貯蓄力が高まります。
節約での貯蓄には限界があるからこそ、まずは、家賃の差額分を貯蓄して、次にメリハリをつけたお付き合い費とキャリアアップ費を実践して、将来のキャリアアップを実現しましょう。