はじめに
夏が近づくと次々オープンするビアガーデン。日本人のアルコール消費量の内訳を見ると、ひと昔前は大半がビールでしたが、最近はカクテルや発泡酒なども増えて消費者の好みは多様化しています。
そして、アルコールと言えば、よく耳にするのが「若者のアルコール離れ」。若者は本当にお酒を飲まなくなったのでしょうか?
一方で、昔より飲むようになったのは、どのような層なのでしょうか?アルコールにまつわるデータを見ながら、消費者の変化を読み解いていきましょう。
アルコール市場の縮小と多様化
日本のアルコール市場は1996年をピークに縮小傾向にあります。
また、消費されるアルコールの種類も多様化しています。1990年代半ばまではビールが約7割を占め、ビールと2位の清酒を合わせると全体の8割を超えていました。しかし、1990年代後半からビールや日本酒が減少し、発泡酒やリキュール、その他の醸造酒等が増えるようになりました。なお、その他の醸造酒等は、2006年の酒税法改正の際に出来た区分で、いわゆる第三のビールの一部が含まれます。
「ビール離れ」の背景
ビール消費量の大幅な減少には税率の高さが影響しています。ビールとは麦芽比率50%以上の醸造酒のことで(2018年の酒税法改正前は67%)、麦芽比率に応じて税率が定められています。消費者が安いビールを求める中、メーカーは麦芽比率の低いビールテイストの発泡酒の開発を進めました。
しかし、2003年に発泡酒に対する税率が引き上げられると、今度は、さらに麦芽比率を下げた商品として、第三のビールの開発へと移りました。ビールの減少や発泡酒の増減などの背景には、このような税率の変更があります。
また、消費者の好みが多様化した影響もあるでしょう。近年、チューハイやカクテルに使われるリキュールの消費量が伸びています。ひと昔前は、会社やサークルなどの集まりでは「とりあえずビール」ということが多かったのでしょうが、最近では若者を中心に、一杯目からそれぞれ好きなものを注文するということが少なくありません。
日本人男性の「アルコール離れ」
さて、アルコール市場はなぜ縮小しているのでしょうか。日本人はお酒を飲まなくなっているのでしょうか?
厚生労働省「国民健康・栄養調査」の飲酒習慣率のデータを見てみましょう。なお、飲酒習慣率とは、「週に3日以上飲酒し、飲酒日1日あたり1合以上を飲酒する」と回答した割合のことです。アルコール消費量がピークであった1996年の飲酒習慣率は男性52.5%、女性7.6%でしたが、2016年には男性33.0%(▲19.5%pt)、女性(8.6%、+1.0%pt)となっています。男性では大幅に低下し、女性では若干上昇しています。飲酒量は男性の方が圧倒的に多いですから、日本のアルコール市場の縮小は男性の「アルコール離れ」の影響でしょう。
「アルコール離れ」は若者だけではない
さて、「若者のアルコール離れ」の状況はどうでしょうか。年代別に飲酒習慣率を見ると、確かに20代の男女で低下しており、特に男性では大幅に低下しています。
一方で男性では20代だけでなく、全ての年代で低下しています。特に30~40代では20代と同様に大幅に低下しています。20~40代の男性は飲酒量が多く、飲酒日1日あたり2合以上が45%程度を占めます。よって、日本のアルコール市場の縮小は、特に飲酒量の多い年代の男性が飲まなくなったことが大きな要因と言えます。