はじめに
ナマズ、ハモ、サンマ、サバ、豚バラ、豆腐――。これらの食材にある共通点、実はすべてウナギの代替品として蒲焼商品が流通している食材なのです。
稚魚であるシラスウナギの激減により、価格高騰が続いているウナギ。近年は絶滅の危険性も指摘され、その消費自体に注目が集まる中、流通各社がその代替商品の普及に力をいれています。
気になる代替商品の味は、どうなのでしょうか。そして、土用の丑の日は今後どうなっていくのでしょうか。
こんなにある「〇〇蒲焼」
「ナス、おいしい」。7月18日、都内で「土用の丑の日 うなぎ代用料理 親子勉強会」と題したイベントが行われ、有機・低農薬のナスを使った「ナスの蒲焼」が振る舞われました。参加した親子は笑顔でナスの蒲焼丼をほおばります。
今回レシピを考案した「おなかま」の田頭和みオーナーは、「(ナスの蒲焼は)もともと群馬県で食べられている料理と聞いています。衣をつけて油で揚げているので、食べ応えもあると思います。今回はタレにリンゴジュースを使い、小さなお子様も食べられる味に仕上げました」と話します。
主催した食品宅配「らでぃっしゅぼーや」の益貴大さんは「ウナギ資源の枯渇が危惧される中、日本伝統のうなぎ食文化を残すために持続可能な土用の丑の日のあり方を提案していきたい」と、開催趣旨について語ります。
親子勉強会でふるまわれた「ナスの蒲焼丼」
流通大手のイオンもウナギ代用品に力を入れています。昨年からナマズの一種「パンガシウス」を使った蒲焼を提供しているほか、「骨取りさばの蒲焼」(1パック税込み278円)や「炭火豚ばら肉蒲焼」(同429円)など、ウナギ蒲焼をほのかに感じさせる代用商品を充実させています。
イオンでは、昨年の土用の丑の日関連商品の売り上げが前年比2ケタ増となっています。イオンリテールの松本金蔵・水産商品部長は「今後も消費者ニーズにあった代替商品を提供していきたい」と話します。
広がるウナギ保全活動
昔からウナギは高級品のイメージがありますが、特にここ数年、稚魚であるシラスウナギの漁獲量が激減し、記録的な高値が続いています。東京都・築地市場のウナギ1キログラム当たり平均単価は2018年5月に5,373円と、前年同月の4,064円と比べて1,309円(32.2%)も高くなりました。
日本で現在食べられているニホンウナギと主に中国から輸入しているアメリカウナギは、2014年からIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種IB類に指定されており、各国が自主的に稚魚の輸出制限をしています。
しかし、日本国内では依然としてウナギのニーズが高く、中国からの輸入は増加中。国内の一部業者が違法に乱獲されたウナギを取り扱っているとの指摘もあります。
この状況に対し、イオンは今年6月、ウナギ取り扱い方針を策定し、公表しました。ウナギ以外を原材料とした蒲焼の商品開発を進めるほか、流通経路の不明なニホンウナギの仕入れは制限し、インドネシア産ウナギの保全プロジェクトに投資を行うなど、国内外で持続可能なウナギ調達体制を推進するとしています。
日本の食文化、継承なるか
総務省が2017年にとりまとめた家計調査では、世帯主が40歳未満の家庭がウナギ蒲焼を1年間に購入する金額は、60歳以上の家庭の5分の1という結果が出ています。
また、食品宅配のオイシックス・ラ・大地が2018年6月に実施した「うなぎの消費と食文化に関する調査」では、「ニホンウナギが絶滅危惧種ということに対し、食べ方を変えようと思う」と回答した割合は83%にのぼり、消費者の意識の変化が現れた結果となりました。
親子勉強会の参加者に土用の丑の日当日のメニューを聞くと、「普段と変わらない食事をする」「うどんとか、“う”のつくものを食べます」といった声が聞かれました。
土用の丑の日にウナギを食べる習慣は、もともと「暑い夏に栄養価の高いものを食べて夏バテを防ぐ」という目的で始まったとされています。その趣旨でいけば“蒲焼”という形にこだわる必要はありませんが、各社とも文化としてのウナギ蒲焼を意識してか、さまざまな“蒲焼”商品を展開させているようです。
ウナギ価格高騰に揺れる、土用の丑の日。代用商品の普及によって、文化を継承することができるでしょうか。