どこのクリニックにすればいいかは相談できても、治療がうまくいかず、落ち込みがちな時に精神面での支えになる相談相手がいない。

それが、結局は不妊治療をする人たちの様々な悩みの根本にあると、不妊に悩む人のための支援団体・Fine理事長の松本亜樹子さんは言います。

解決策はあるのでしょうか。前編の不妊治療のやめ時はいつなのか?深刻度増す「お金の問題」に引き続き、不妊治療と当事者の今現在の悩みについてお聞きします。


誰にどう話せばいいのか?

不妊に悩む人を支援するNPO法人・Fineは2004年に活動を開始しました。この10数年の間で当事者の悩みの種類や質に変化はあったのでしょうか。理事長で創設メンバーでもある松本亜樹子さんによると、「ここ数年で特に目立つのは、やはり『治療と仕事の両立が困難』『やめ時がわからない』という悩みですね」(前編記事を参照)。

一方、当初から変わらず、相談事案として多いのは「(夫などパートナーを含め)どう周囲に理解してもらえるよう、話せばいいのかわからない」という“コミュニケーションに関する悩み”だと言います。

実際、不妊治療のつらさや大変さは、体験者でないとなかなか実感できない部分があります。

例えば、女性の場合、妊娠・出産の経験者である義母は愚か、実母にすら悩みをわかってもらえず、相談できないことが多々あるといいます。実母が不妊を経験していない場合、「私は普通に妊娠も出産もできた」「私はあなたをちゃんと健康に産んだのだから、妊娠できないはずはないのに……」などと言われてしまうことすらあるといいます。

本来は、カップルの問題なので、男女どちらが不妊の問題を抱えていたとしても、パートナーが一番の相談相手や話し相手であってほしいところです。しかし、負担の種類の違い、治療に対する男女の知識の偏りなどが原因で、夫婦間ですら、うまく話し合ったり、支え合えないというケースは決して少なくありません。

友人なら話しを聞いてくれるかもしれません。とはいえ、デリケートな問題なだけに、経験者でなければ、どう反応すればいいのか分からず、「『治療がつらくて』と言っても『そう……』で終わってしまう。相談した側が『相手に気を使わせたり、暗い気持ちにさせてしまった』と罪悪感を抱いてしまうこともあります」。

働いている場合、治療を進めようとすると、どうしても休みや半休を取らねばならず、上司や同僚に話して理解を求める必要があります。

しかし、治療していることを話せば、「『不妊白書2018』でも明らかになったように、相談どころか職場で不利な立場に追い込まれることがある。かといって、話さずにいると『なぜ急に休むのか』と思われ、信頼を失うことになりかねない。ジレンマに悩まされる人が多いのが現状です」。

生殖心理カウンセラーは全国でも77人程度

家族であれば、精神面のつらさを、会社の上司や同僚であれば、治療の頻度や緊急度について理解してほしいーー。しかし、結局のところ、当事者のこうした様々な悩みの根本原因は、どうすればいいか悩んでいる時に「相談できる人がいないこと」だと松本さんは言います。

そこで、今、特に必要とされているのが「生殖心理カウンセラー」です。生殖心理学会で研修・資格認定を受けた、不妊治療をしている当事者の心理面に関する知識が深い臨床心理士など心理の専門家です。全国でもまだ少なく、公開されている名簿では77人ほどしかいません。

「不妊や不妊治療のつらさを説明・相談するというのにも、案外、労力が必要です。ですので、やはり、あまり多くを説明しなくても分かってくれる不妊経験者や、不妊になるとどういう心理になるかわかっている人に、相談する方も話したいんですね。Fineでも相談相手をするのは、ピア・カウンセラーといって不妊治療の体験者です」。