はじめに

IKEAもついに赤字転落

実はIKEAも赤字です。日本法人であるイケア・ジャパンは上場していませんので、官報に公告している実績を集計してみたところ、ここ数年かなり苦戦していることがわかりました。

官報公告は2012年8月期以降しか実施していないようですので、過去6期の推移を見てみると、営業利益のピークは2013年8月期で87億円。それがみるみるうちに減って、2017年8月期はついに営業損益段階から赤字になってしまいました。

総務省と経済産業省が合同で数年に一度のペースで実施している「経済センサス活動調査」でも、国内の家具小売業の年間商品販売額は1991年(2兆7,407億円)をピークに下がり続け、2012年は8,264億円でした。21年間で7割も減ってしまったのです。

2016年の調査では1兆1,335億円まで回復したようですが、それでも25年前の水準には届いていません。

住宅事情の変化で大型家具の需要が激減

なぜ日本人は家具を買わなくなったのか。考えられるのは住宅事情の変化です。近年のマンションは洋室中心で、しかもウォークインクローゼットを設けるなど、収納を充実させた設計になっています。

しかし、築30年を超えた古いマンションで、リフォームをかけていないものの間取りは、最近のものとはまったく違います。

マンションが日本で普及し始めたのは1970年代です。1980年代半ばくらいまでは、洋室といえばダイニングキッチンくらいで、ベランダ側に6畳の和室2部屋を配置して2DK、もしくは廊下側に洋室1部屋を加えて3DKというのが一般的でした。

その和室についているのは幅1間の押し入れのみ。洋室の収納も幅半間程度が普通でしたから、1980年代後半くらいまではマンション暮らしの人でも婚礼3点セット(整理ダンス、衣装ダンス、洋服ダンス)を購入するのが普通でした。

現在スタンダードになっている、ベランダ側に設けた洋室とキッチンを一体化させ、対面型にしたリビングダイニングが一般化したのは1990年代に入ってから。一戸建ての設計も今は基本的にこの形です。いまや婚礼3点セットは無用の長物と化し、収納専用部屋に押し込まれる存在となりました。

家具販売の急激な好転は見込めない?

家具を大量購入する最大の機会となるのは結婚ですが、その結婚をする人が減る一方、個人差があるとはいえ、日本人はモノ持ちがよく、そうそう簡単に家具を買い替えることもしません。

住宅自体の広さも、以前よりは広めになってはいるものの、劇的に拡大したわけではありません。むしろ郊外の広い一戸建てから、交通の利便性が高い都市部のマンションに住み替えるシニアが増えていますから、大型家具の需要が急に改善する要素は見当たりません。

いうまでもなく、こういった時代の変化には大塚家具も対応をしていて、ホテル向けやオフィス向けなど、業務用への対応を強化しています。しかし、業績への貢献にはいましばらく時間がかかりそうです。

ニトリの上場は29年前の1989年で、当時の売上構成は7割が家具、3割がインテリア用品でした。が、1990年代半ば頃から家具の構成比がみるみる落ちて、2003年2月期に逆転しています。

ニトリは時代の変化に対する対応が20年早かった。それが今の株価の差なのではないでしょうか。

この記事の感想を教えてください。