はじめに
今や親子3代が参加する一大行事として定着した感のある、ランドセル選び。お目当てのランドセルを購入するため、早くから情報を収集し、子供に合った商品を選ぶ「ラン活」という言葉も生まれています。
こうした結果、商戦も早期化が進展。近年では、家族が一堂に会することの多い、お盆の時期が年間販売のピークとなっているようです。
そんなラン活に最近、異変が起きています。かつてはデザインが最重要項目だったというランドセル選びは、どのように変わったのでしょうか。
売れ筋ランドセルは大容量が特長
「私、水色がいい」「僕はこっちの黒がいい」――。小学校入学前の子供たちが思い思いのランドセルに手を伸ばします。
流通大手のイオンが8月7日にイオンスタイル東戸塚で開いた「ランドセル試着会」。試着体験に子供たちが沸く一方、ラン活中の保護者たちは今年の販売動向やランドセル選びのポイントに熱心に耳を傾けていました。
今年のイオンでの売れ筋は、「みらいポケット」という大容量と背負い心地を重視した商品。小マチ(ポケット部分)が3センチメートルから8センチメートルまで広がるため、教科書だけでなく、体操着や水筒もスッポリ入るといいます。
また、背当て部分に3ヵ所パッドを配置し、背中にかかる重量を分散。荷物が重い時でも身体への負担を軽減し、軽い背負い心地を実現させました。
「みらいポケット」は小マチと大マチを合わせると、マチが20.5センチメートルに
みらいポケットは発売初年度に当たる昨年、イオンでの販売数でいきなりトップに躍り出ました。今年は色とデザインの組み合わせを昨年の16種類から24種類に拡大したところ、現時点で昨年比1.5倍の売れ行きを示しています。
女の子に人気なのは、サイドや肩ベルトにハートや小花柄をあしらった「ハートフルブーケ」タイプ。男の子には、かぶせ部分にエンブレム鋲や反射板を施した「アドバンス」が人気だそうです。
大容量人気の背景に“脱ゆとり”
みらいポケットは本体価格が税込み6万円台からと、スタンダードな商品に比べると高めの価格設定。それでも好調な売れ行きを示している背景には、どんな理由があるのでしょうか。
小学校の教科書のページ数は、脱ゆとり教育の流れの中、2005年からの10年間で約35%も増加しています。さらに、近年の猛暑の影響もあり、夏場に水筒を持参する機会が増えました。こうした事情から、小学1年生が学校に持っていく荷物は4キログラムになることもあるといいます。
実際、イオンが全国の小学生とその保護者約300人を対象に実施した調査では、小学生の8割が「通学する際に荷物が多いと感じている」と回答。また、「荷物がランドセルに入りきらない」と悩む小学生は、全体の85%に上りました。
他方、小学1~2年生の保護者の6割が「入学前のイメージよりも荷物の量が多い」と感じているとの結果が出ました。さらに、手や腕への負担、転んだ時の危険など、安全面に不安を抱えている保護者が5割近くいることも明らかになりました(複数回答あり)。
これまでは、保護者が丈夫さなどの機能面を重視し、子供はデザインで選ぶ傾向があったといいます。それが、ここ1~2年は容量と背負いやすさにシフトしているようです。