はじめに
本業の儲けを示す営業利益は37億円の赤字――。プライベートジム「RIZAP」などを運営するRIZAPグループの2018年度は、第1四半期(4~6月期)に大きなビハインドを背負った形でのスタートとなりました。
しかし、会社側は営業利益ベースで前期比69.2%増の230億円という通期計画を据え置いたまま。瀬戸健社長は「損失を惜しまずに、どんどん投資していく」と、強気の姿勢を崩していません。
瀬戸社長とRIZAPの自信の裏には、何があるのでしょうか。8月13日に開かれた第1四半期の決算説明会でのやり取りから、探ってみたいと思います。
発表翌日の株価は12%安で寄り付き
決算説明会と同日に発表したRIZAPグループの第1四半期業績は、売上高が前年同期比82.1%増の521億円、営業損益が37億円の赤字(前年同期は27億円の黒字)でした。営業損益は前年同期に比べて64億円という大幅な悪化となりました。
第1四半期の赤字の主因は、今後の成長に向けた先行投資の増加。マーケティング費用が前年同期比で19億円、新規出店や事業拡大に伴う費用が同10億円、その他の先行投資や構造改革費用などが同11億円と、合計40億円の費用増が利益を押し下げました。
具体的には、第1四半期だけでインテリア雑貨店「HAPiNS」(旧PASSPORT)を中心に44店舗を新規出店。正社員も4~6月の3ヵ月間で600人増加したといいます。
これを受けた翌14日前場の同社株価は前日比12.4%安の670円で寄り付き、一時は年初来安値となる620円まで下落しました。株式市場も2018年度の赤字スタートを深刻に受け止めた格好です。
“やり切る力”を横展開
それでも、冒頭でも触れたように、瀬戸社長は強気の姿勢を維持します。「先行投資の効果が、足元で先行指標に現れてきています。第2四半期(7~9月期)も投資を行いますが、今後は連続で過去最高益を達成していきます」。
実際、その兆しも出てきています。主力のプライベートジム事業では、関連事業売上高が4~6月期に四半期ベースで初めて100億円を突破。テレビCMの効果で主要店舗では平均2ヵ月の順番待ちとなっており、第2四半期以降で30億円の売り上げ計上がすでに見込める状態だといいます。
「やり方や理屈は本屋でも買えます。だけど、続けられない。わかっているけれど続けられないものをやり切らせる強みを、われわれは持っています」(瀬戸社長)
この“やり切る力”は、コモディティ化(汎用化)していない、RIZAPだけの強み。それゆえ、プライベートジムの営業利益率は30%という高さを誇っています。この強みをこれまでに買収してきた他の事業にも横展開していくのが、同社の成長戦略というわけです。
「まだまだ改善の余地がある」
ただし、先行投資で集客し、“やり切る力”で収益に転換していくビジネスモデルには、1つの宿命があります。上半期は費用が先行してしまうため、下半期に利益が偏ってしまうという収益構造です。
実際、直近5年間を平均すると、通期の営業利益に占める上半期の割合が18.2%にとどまる一方、下半期は81.8%。瀬戸社長もこのファクトを掲げ、ステークホルダーの先行きに対する不安の払拭に努めます。
とはいえ、RIZAPグループの上半期の営業利益を四半期ごとに分けて分析すると、直近2年は7~9月期よりも4~6月期のほうが利益が出ている様子が読み取れます(下図)。もちろん、この傾向は出店のタイミングや広告の打ち方によって変動するものの、4~6月期からのリカバーは決して低いハードルではないように映ります。
6月から同社の経営に参画した松本晃COO(最高執行責任者)は「改善の余地はどんな会社にもあります。たくさんの買収した子会社には当然ながら、まだまだ改善の余地がある。大きく可能性のある会社を伸ばすのと、どうしようもない会社の赤字を止めるのが、私の仕事」と語ります。
瀬戸社長と松本COOの二人三脚で、プライベートジムでの成功体験を他事業に横展開し、いかに早く先行投資を回収できるか。その1点にRIZAPグループの今後が懸かってきそうです。