はじめに

消費者のニーズ動向に大きな変化が生じるとき、気象がそのきっかけになることが結構あります。

ニーズ変化のきっかけになる気象条件を把握し、将来の気象予測からそのタイミングを掴んでいれば、消費者ニーズに合わせるための様々な対策を立てることができ、事実、商品のメーカーや商品を販売する小売店ではそれを日々実践しています。

夏から秋にかけて暑さが和らいでいくこの時期の消費ニーズ変化を、入浴スタイルという観点から考えてみます。


ウェザーマーチャンダイジングとは

気象は日々の生活や人間の行動に大きな影響を与えます。暑さを感じるときは汗をかき、寒さを感じるときは身震いをするなど、無意識のうちに起こる体内の反応もありますが、暑さを感じるときはアイスクリームやかき氷を食べたくなり、寒さを感じるときはおでんや鍋物料理を食べたくなるなど、気象はニーズの変化にもつながります。

その結果が消費動向の変化として現れます。つまり、気象とニーズの変化の関係の法則を理解しておけば、天気予報という未来予測情報をもとに消費の動向も推測することが可能です。

コンビニエンスストアやスーパーマーケットをはじめとする流通企業において、日々のオペレーションの中で気象情報を活用することは極めて重要であり、「ウェザーマーチャンダイジング」と呼びます。

入浴スタイルに関する仮説を立てる

ウェザーマーチャンダイジングの一例として、日々の人々の行動パターンを、気象と商品の販売動向の関係から類推してみると面白い仮説を立てることができます。

たとえば、家庭での入浴の場面を想定します。夏場は外の気温が高く汗をかきやすいので、家に帰ってきてすぐシャワーを浴び、そのまま湯船に浸かることなく済ませてしまう家庭があることでしょう。

一方、冬場の寒い時期はシャワーだけではすぐに体が冷えてしまうので、多くの家庭でお風呂にお湯を張ってゆっくり浸かる入浴スタイルにすることでしょう。

それでは、夏場にシャワーで済ませてしまう家庭が、どの時期あたりからお風呂にお湯を張って湯船に浸かる入浴スタイルに変えるのでしょうか。

入浴剤の販売数の伸びが大きくなったときに、湯船に浸かる入浴スタイルに切り替えたと仮定し、その時期を推定します。最も簡単な方法は、入浴剤の販売数の時系列グラフを見ることです。時系列上で販売数が伸びるタイミングを調べます。

ただし、気を付けなければならないのは、毎年同じ時期と決めつけて良いかどうかということです。比較的すんなり秋に入った年と、残暑が長引いた年とで違いはないのでしょうか。そして、今年も同じ時期から入浴剤の販売数が伸びるのでしょうか。

人間生理と気象との関係から仮説を立てる

人はどのような目的で入浴するのか、人のニーズや行動パターンに関することであれば、その根本である人間生理のメカニズムから仮説を立てることが非常に重要です。

汗を早く流したい、湯船に浸かって体を芯から温めたいなど、入浴スタイル別の目的の違いを考えた場合、色々ある気象要素の中でも気温(温度)の影響が最も強いと考えられます。

そこで、商品の販売動向と気温の関係を分析し、ニーズの変曲点を調べ、そこから時期の特定を試みます。

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