はじめに

1673年に越後屋として創業してから345年。1904年には「デパートメントストア宣言」を行い、日本初の百貨店となった日本橋三越本店。まさに百貨店の“保守本流”とも呼ぶべきこの店舗が、2019年度にかけて2段階の大規模リニューアルを進めています。

その第1期のグランドオープンを10月24日に控える中、9月6日にはプレス発表会が開かれました。壇上で浅賀誠・日本橋三越本店長は「新しいカタチの百貨店を目指します」と宣言。日本最古の百貨店は、どのように生まれ変わろうとしているのでしょうか。


至れり尽くせりのコンシェルジュ

「本日はどういったものをお探しですか」――。日本橋三越本店の入り口に立っている着物姿の女将(おかみ)に客が要件を告げると、女将がその内容に適したフロアへと先導してくれます。そこで待ち構えているのは、青いバッジを付けたコンシェルジュと呼ばれるスタッフ。客の要望をさらに細かく聞き出し、最適な商品をコーディネートしてくれます。

たとえば、会社で要職に就いている女性が大きいプレゼンテーションの機会に着る服を探していたとします。レディス衣料担当のコンシェルジュには、イメージコンサルタントの資格を持つスタッフが9人おり、その客やTPO(時と所と場所)に合ったパーソナルカラー診断をしてくれます。


専門の資格を持つコンシェルジュが最も適したカラーを診断

そのうえで、その顧客に最も適したコーディネートを提案。ベストな選択肢が売り場になければ、さまざまなネットワークを駆使し、オーダーメイドのマッチングも引き受けてくれます。さらに、プレゼンに不安があれば、メンタルトレーニングの紹介までしてくれるという充実ぶりです。

また、フードコンシェルジュに贈答用の食料品を相談すれば、フード以外のフロアにも掛け合い、たとえば食器などのアイテムも顧客の要望に合わせてコーディネートしてくれます。客の希望があれば、生産現場の見学にもアテンドしてくれるともいいます。


フードコンシェルジュは他フロア商品の組み合わせもコーディネート

至れり尽くせりのコンシェルジュサービスですが、商品代金以外に料金が発生することはありません。追加料金が生じるのは、オーダーメイドやメンタルトレーニングなど、外部のサービスを利用した場合だけです。

「人が中心の百貨店」とは?

今回の発表会で、浅賀本店長が何度も繰り返したのが「人が中心の百貨店」という言葉。「これまでの百貨店は商品が基軸でしたが、ここに顧客機軸の要素を加えていきます」と説明します。

百貨店として100年以上の歴史がある三越本店ですが、これまで「おもてなし」に関するきちんとしたルールや基準、業務フローがありませんでした。その結果、おもてなしに対して従業員がイメージするものもバラバラだったそうです。

これではいけない。もう一度、三越のおもてなしとは何か、について社内で議論しました。その先にたどり着いたのが「パーソナライズ×おもてなし」というキーワード。客1人1人の要望に応えるのが三越のおもてなしだと結論づけました。

ただし、ここで言う「人」とは客だけを指しているわけではありません。販売員もその中に入っているようです。「コンシェルジュなどにもフォーカスして、社員も主役のお店になっていきます」(浅賀本店長)。

店舗のホームページなどでコンシェルジュのプロフィールなどを公開。客が「共通の趣味を持つこの人になら、コーディネートしてもらいたい」と考えるきっかけにしたい考えです。

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