はじめに

9月7日に自民党の総裁選が告示されます。20日の開票に向けて、安倍晋三総裁と石破茂元幹事長、両陣営の支持獲得に向けた動きが活発化していくことになります。

自民党総裁選は、同党の国会議員と、党所属メンバーの中から選ばれた人たちが投票できるもので、一般の国民は投票できません。こうした自民党の中だけでの投票で決まってしまう首相が本当に私たちの民意を反映しているのか、議論になることもあります。

その意味で、総裁選に際しては国民が首相や内閣を支持しているのかが注目されることになり、世論調査における内閣支持率が重要視されます。支持率が低いと、政府・与党のトップにふさわしくないと見られてしまい、政権交代の流れになってしまうからです。

ところで、この内閣支持率をめぐって、株式市場ではよく知られたアノマリーがあります。「内閣支持率が上がると、株価も上がる」というものです。


証明された支持率と株価の連動性

まずは、実際のデータから見てみましょう。内閣支持率はNHKが公表しているものを使いました。NHKのウェブサイトには「コンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける方法で世論調査を行いました」と記されています。ランダムに電話をかけて、答えてくれた意見を集計しています。

NHK以外にもマスコミ各社は似たような世論調査で内閣支持率を公表していますが、それぞれ少しずつ異なります。本当は国民全員に調査ができれば良いのですが、サンプル調査なので、各社の調査先の違いから値も違っていることには注意が必要です。

8月7日に更新されたNHKの調査では支持率が41%となり、先月から3ポイント下がりました。図1は内閣支持率と日経平均株価を並べてみたものです。NHK調べの支持率は月次で公表されています。株価は毎月の月末値を使っています。

実際に2本のグラフの推移は連動しています。「内閣支持率が上がると、株価も上がる」は確かなようです。

過去1年間の相場と政権を振り返る

たとえば、2017年の年末にかけて支持率は上昇してきました。たびたび行われた日米首脳会談で、両国は北朝鮮に対する圧力を最大限に高めること、自由で開かれたインド太平洋戦略の実現に協力する方針で一致することが決まるなど、安倍首相の外交面での成果が背景にあるようです。日経平均株価も連動して上昇しています。

一方、2018年に入って支持率は低下しました。これは加計学園問題への追求が深まるなどのネガティブ要因が背景にあります。この時、株価も連動して下落しました。

しかし、7月から支持率が上昇しています。NHKのサイトには、支持理由の回答もまとめられています。8月調査では「他の内閣より良さそうだから」が支持理由の50%を占めていました。自民党総裁選が近づいたことで、改めて2013年からの安倍政権の成果が顧みられています。

アベノミクスが成功したか否かについては、さまざまな議論があります。しかし、企業業績は好調です。直近の本決算となる2018年3月期では、上場企業の純利益が2年連続で過去最高を更新しています。

雇用環境も良好です。失業率は水準が低いほうが失業している人が少ないので、雇用環境が良いことを表します。総務省が発表した5月の完全失業率は2.2%となり、25年7ヵ月ぶりの低水準でした。足元にかけても良好な水準を維持しています。

依然、デフレ脱却への道筋が明確に見えにくいことや、長期的に見て2020年の東京五輪後のわが国の成長の牽引役がどうなるかなど、課題は少なくありません。それでも、安倍政権は経済政策面で一定の評価があり、それが「他の内閣より良さそうだから」の理由にもつながっています。足元の株価も連動して盛り返しており、今後の上昇が期待されます。

(写真:ロイター/アフロ)

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