はじめに

アプローチしてこなかった層に訴求

それにしても、アパレルメーカーであるはずのレナウンが、なぜこんなサービスを始めたのでしょうか。

同社はこれまで、百貨店販路を中心にスーツなどを販売してきました。ただ、百貨店業界全体の売上高は長期的に低迷傾向。新しいビジネスの構築が不可欠な状況となっていました。

レナウンがダーバンブランドを始めたのが1970年。半世紀をかけて蓄積してきたノウハウを強みにして、販売ではない事業モデルができないか――。北畑稔社長のそんな一声から新規ビジネスの模索が始まりました。

そこで着目したのが、さまざまな業界で広がりを見せていた、利用期間に応じて料金を支払うサブスクリプションビジネスでした。各種の調査から衣料をシェアすることに抵抗感のある人が相当数いることを把握できたため、あえて客専用のスーツを届ける形にしました。


スーツに関するさまざまな困り事に対応した点に特徴

想定ターゲットは30~40代。給与水準が上がり、社内的な責任も出てきて、スーツもちゃんとしたものを着ておきたい世代、という設定です。実際に利用の多い年代は40代だといいます。

「ファッションそのものにあまり興味のなかった人向けのサービスだと考えています。今まで当社がアプローチしてこなかった方々であり、新たなターゲット層に顧客の幅を広げるためのアプローチです」(中川統括部長)

月額5000円を切ることにこだわり

今回の企画の検討がスタートしたのは、2017年初頭。しかし、レナウン社内には、サブスクリプションのビジネスをした経験のある人が誰もいません。プランや価格の設定をどうするかが最大の課題だったといいます。

「選択肢をどこまで多くすればいいのか、多くし過ぎても今度は選べない。商品構成と価格のバランスに腐心しました」と、中川統括部長は当時を振り返ります。

モニター利用の段階では、現在の高価格プランに当たるサービスを月額1万2,000円に設定。数社に利用してもらったそうです。これに対する反応は「月額1万円を超えるなら、いらないかな」。一方で、お試しでやってみてもいい価格は「5,000円を切る水準であれば」という声も拾えました。

エクセルシートとにらめっこしながら、システム構築に移行するリミットだった11月の直前まで、さまざまな料金設定を試しました。「採算的にはギリギリでしたが、5,000円を切ることにこだわりました」(中川統括部長)。

今年3月に、ようやくトライアルがスタート。取引先などに声をかけ、利用者を徐々に増やしていきました。当初はスーツの品ぞろえは3色・8サイズの展開でしたが、トライアル利用者の要望を受け、秋冬シーズンからは5色・12サイズから選べるようにしました。

5年以内に利用者1万人へ

次の春夏シーズンからは、クールビズプランも用意する計画。上着なしで、スラックスの本数を増やす予定です。ジャケパンスタイルへの対応も、今後の検討課題だといいます。

レナウンでは、5年以内に利用者数を1万人まで増やしたい考えです。「この事業を通してレナウンのスーツを利用してもらうことで、ファッションの楽しさに目覚めて、購入していただくきっかけになれば」と中川統括部長は語ります。

今後は、会員向けサービスを提供している企業との連携も強化していきたいとしています。類似サービスがひしめく中、レンタルではないという強みを、想定ターゲットにどこまで訴求できるかが、着ルダケを拡大させるうえで重要な一歩となりそうです。

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