はじめに

総務省案ではエコカー減税対象は全体の5割にまで縮小

新車販売に占めるハイブリッドカーや電気自動車など、2020年度基準を20%以上達成している自動車は新車全体の39%、これに10%以上達成の12%を加えた車種だけを減税対象にしようというのが総務省案で、これは減税対象を新車販売台数の5割まで縮小するという案になる。

総務省はエコカー減税の対象を絞ることで税収をしっかりと確保したいという意向なのである。2016年度の自動車取得税の税収は1075億円なのだが、これは10年前と比べると5分の1のレベルだ。リーマンショックのときは仕方なかったにせよ、世界的な経済危機とはいえない現状ではこれをなんとか元のレベルに戻していきたいというのが総務省の本音であろう。

さらに非課税となる車種は全体の1割に絞りたいと言うのが総務省の意向だ。ということはハイブリッドカーの多くが非課税から外れることになる。非課税となるのは電気自動車などエコカーの中でもごく一部という状況にもっていこうというのが総務省案ということになる。

このように景気拡大と温室効果ガス目標達成を念頭に置く経産省と、税収拡大を狙う総務省の隔たりは大きい。着地点はどうなるのだろうか?

新車全体の7割が攻防ライン

現状案は結局のところは両省庁の駆け引きの最初の提示条件ということで、これから業界を挙げて着地点を探していくことになりそうだ。その際のひとつの攻防ラインが2020年度基準達成車までを減税対象とするという案である。

これは新車全体の7割のラインになる。現在エコカー減税対象の車種の2割が対象から外れることになる。人気車種で言えば日産のエルグランドあたりが外れるラインにかかってくる。

自動車会社の業績に関する影響で言えば、SUVのような大型の乗用車の販売台数はエコカー減税が終了すれば一定レベルで売上が下がることになるだろう。その観点では日産が一番影響を受けることになるかもしれない。

一方で総務省案に近いところまで押し込まれてしまうと、ハイブリッドカーの売れ行きに大きなブレーキがかかる可能性もある。そうなってくるとトヨタが一番大きな影響を受けることになる。

ある意味でリーマンショック以降の日本の新車販売構成は、エコカー減税の影響を大きく受けてきた。過去何十年にもわたって新車販売トップだったカローラが没落しプリウスが台頭したのはあきらかにエコカー減税の影響である。

それが制度の改定でさらに変わることになるかもしれない。自動車各社の国内販売台数の未来を占ううえで、エコカー減税の攻防がどう着地するのかは、非常に大きな要素なのである。

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