はじめに

8月10日のトルコショックにより、同国通貨のトルコリラが注目を集めました。あれから約1か月、通貨の下落は一旦落ち着いたように見えますが、同国の実体経済はどうなのでしょうか?様々な市場データから確認してみましょう。


通貨安の背景と現状を振り返る

現状を確認するために、まずは過去5年間のトルコリラの対米ドル相場の推移を見てみましょう(下図)。直近で一気にリラ安の方向に動いているのに目が行くかと思います。これがトルコショックの時の動きです。しかし、5年前から見てみると、実はずっと通貨安の傾向にあったことが分かるかと思います。

そもそもトルコは経常赤字と財政赤字両方に悩む国で、いわゆる「双子の赤字」を抱えています。比較的通貨が売られやすい状況にあった中で、米国のFRB(連邦準備制度理事会)が出口戦略を取り、ECB(欧州中央銀行)も予定通り年内で金融緩和策を終了するということから、各国の金融政策の正常化を受けて資金流出圧力が加速していきました。

トルコの消費者物価指数の推移をみると、同国は前述の様に双子の赤字だけでなく、慢性的なインフレ体質(6~10%)に悩んでいることも見て取れるかと思います(下図)。そして、2017年頃からは通貨安による輸入物価の上昇もあり、インフレ体質が悪化していることもグラフから読み取れるかと思います。

トルコ当局はどう対応してきたのか

通貨安やインフレの加速もあり、同国の中央銀行は正攻法として政策金利を上げて対応していくものかと思われましたが、2018年6月にエルドアン大統領が再選を果たすと、財政や金融を担当していた閣僚を排除し、娘婿を財務相に指名しました。そして、高金利を批判する姿勢を変えず、事あるごとに中央銀行をけん制しました。

中央銀行の独立性は守られるべきであると思われたものの、 同国の中央銀行は7月に前月のインフレ率が4年ぶりの高水準に上昇したにもかかわらず金利を据え置いたことで、マーケットには驚きの声が広がっていました。

その後の8月、米国との関係悪化をきっかけにしてトルコショックが起こりましたが、トルコリラ安に追い打ちをかけていたのは、トルコのこのような姿勢が根本にあったと思われます。

9月3日に同国の中央銀行が「物価安定を支援すべく必要な対応を取る」という内容の声明を突如発表したことにより、今回の金融政策決定会合では利上げが決定されるのではないかとの観測がでました。

蓋を開けてみれば案の定、トルコ中央銀行は9月13日(現地時間)に政策金利(1週間物レポ金利)を現状から6.25%引き上げ、24.00%とすることを決定しましたが、市場のコンセンサスが3.25%の利上げだったことを考えると、今回は前回とは真逆の利上げ幅でのサプライズを演出したことになります。

これからのトルコはどうなる?

トルコのGDP(国内総生産)成長率の四半期ごとの推移を見てみると、最新の数値である2018年4~6月期の成長率は前年同期比+5.21%と前期(同+7.26%)から鈍化しました(下図)。これは6四半期ぶりの低水準です。

今回の大幅利上げにより、通貨安については一旦落ち着きましたが、同国の経済ということになると、今後しばらくは厳しい状態が続くことになるでしょう。

しかし、今回の利上げの際の声明を見れば、同国の中央銀行の姿勢が本気であると期待できます。トルコショックの背景には(1)慢性的なインフレ体質や経常赤字、(2)エルドアン大統領の強権的な政策運営、(3)対米関係の悪化などがある訳ですが、今回の大幅利上げにより(2)の懸念は以前より後退した印象を持ちます。

また、(1)についても今回の大幅利上げがインフレの鎮静化に一役買う可能性があるだけでなく、国内需要の減速による輸入の減少や、通貨安による輸出競争力の向上、外国人観光客の増加などにより、経常収支が改善される可能性があります。

よって、依然として対米関係の悪化や、エルドアン大統領の動きなど注視すべき事項は残ってはいるものの、一時の最悪な事態は乗り越えたと考えます。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)

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