はじめに

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。今回は花輪陽子氏がお答えします。

「一般的にアメリカ人はあまり貯金をしない」という話を聞いたことがあります。貯金を気にしなくてよいためか、年に何度も休暇を取って旅行に出かけたり、コンサートに出かけたりして、一見豪華な生活を送っているように感じます。貯金を気にしなくてよいというのは、単に文化の違いなのでしょうか。それとも、社会保障制度や経済の仕組みの違いなのでしょうか。また、純粋な疑問として、彼らは貯蓄しないことで、なにかデメリットを被っていないのでしょうか。


〈相談者プロフィール〉
女性、30代前半、既婚、子どもなし


花輪: 米連邦準備制度理事会(FRB)によると、アメリカの家計負債は2017年10~12月(第4四半期)に、現在の景気拡大期では最高のペースで拡大しました。家計負債は年率5.2%増と、2007年第4四半期以降では最高の伸びでした。

このような数字を見るとアメリカ人はまったく貯金をせずに、クレジットカードでローンをしまくっていると思われるかもしれません。しかし、借金大国のアメリカよりも、日本の貯蓄率の方が低下していることをご存知でしょうか。

実は日本の方が低い「貯蓄率」

1970年代の日本の貯蓄率は20%を超えていましたが、1980年代から低下傾向にあり、2000年には急速に低下し、昨今は2%台になっています。

OECDが発表している主要先進国の家計貯蓄率(2016年)を国別に見ると、日本2.56%、中国37.07%、スイス18.79%、スウェーデン16.62%、メキシコ15.45%、ルクセンブルク14.98%、ドイツ9.69%、フランス8.16%、オーストラリア7.92%、ノルウェイ7.07%、オランダ6.43%、アメリカ5.04%です。日本の貯蓄率は世界的に見ても相対的に低いのがよく分かります。

貯蓄率が2%というのは、2%しか余地がないということ。仮に賃金が2%以上下がってしまえば、生活は赤字に転落するということです。

「リボ払い」が当たり前のアメリカ人

日本との違いとしては、アメリカは貧富の差が非常に激しいということと、クレジットカード社会のため大きな買い物はリボ払いで支払う文化があることが挙げられます。また、自動車や教育費などもローンを組む傾向があります。

日本はまだまだ現金社会なので、信用を使って収入以上にお金を使うということがアメリカほど一般的ではありません。アメリカでは、世界的な株高を背景に株式の含み益を担保にして、リボ払いを拡大させている個人も多いと推測されます。

アメリカは散財しやすい環境?

また、11月のブラックフライデーから12月のクリスマス商戦に向けて、カード会社やショッピングモール、地域が一体となり、街ではクリスマスセールを一斉に掲げて消費を促すためのプロモーションをかけまくります。そのため、お得につられて、ついつい財布の紐がゆるくなってしまうというのもあるでしょう。

この手のプロモーションは、アメリカやアメリカの文化に影響を受けたシンガポールなどの国と比べると、日本のプロモーションはまだまだ盛り上がっていないと感じます。健全な消費者にとっては、優しい国と言えるのかもしれません。

ちなみに、アメリカの社会保障も日本と同じように問題を抱えており、北欧のように国が何でも手厚く見てくれるという仕組みではありません。

性質的にアメリカ人は買い物が好きで、今欲しいものは待たずにリボ払いをして買う人も多く、それを促す仕組みが日本より整っているという背景も考えられます。反面教師にして、貯蓄や倹約に励むとよいかもしれません。

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