どの金融機関にも1人は存在するという「四季報マニア」を取り上げてきた、この連載。過去2回は、アプローチこそ違うものの、『会社四季報』を愛してやまない愛好家たちに四季報愛を語ってもらいました。

しかし、3回目の今回は「私は四季報愛好家ではありません」と断言する四季報マニア。銘柄発掘のため、会社の役に立つため、四季報を10年間読破し続けているという、いちよし経済研究所の張谷幸一・企業調査部長です。

四季報といえば、数字や文字が詰め込まれていて、なかなか手が出しづらいと考えている個人投資家にとって、仕事のために仕方なく目を通している張谷部長の読み方は参考になる部分が多いかもしれません。愛好家ではない四季報マニアは、会社四季報をどう読み込んでいるのでしょうか。


スピード重視でたどり着いた読み方

中小型銘柄の分析に定評のあるいちよし経済研究所では、約550社を継続的に調査しています。このうち、毎年10~15%の銘柄を入れ替えているそうです。「他社に先駆けて銘柄を発掘することが、当社のブランド力を高めるうえで重要だと考えています」(張谷部長)。

そんな張谷部長、四季報が手元に届くと、その週末に20時間以上を費やして、四季報を読み込むといいます。ただし、目を通すのは個別銘柄のページだけ。巻頭や巻末の特集は読みません。

「いつまでも四季報を読んでいるわけにはいかないので、かなり端折って読みます。仮に1社当たり10秒だとしても、3,600銘柄以上あるので、10時間以上かかる計算になってしまいます」(張谷部長)

スピードを重視した結果、たどり着いた読み方が「営業利益のカタチ」だけを見ていくというものです。個別銘柄欄の左下には、その企業の過去数年の実績や今後2年の業績予想などが掲載されています。この欄に掲載されている営業利益の推移を見ていくわけです。

どんなカタチが有望?

この時、営業利益の額が大きすぎても、小さすぎても、望ましくないといいます。理想的なのは、2ケタ億円の営業利益を何年間か続けている会社。数億円レベルだと、ちょっとした環境変化で業況が厳しくなるケースが多くなります。一方、何百億円もある会社だと、投資妙味が薄くなります。

カタチとして理想的なのは、営業利益が右肩上がりの銘柄。ただ、今期が減益予想でも、それまでが伸びていればチェックが必要です。今期の減益が一過性の要因によるものだと「買い」の場合があるからです。


張谷部長は営業利益が右肩上がりになっている銘柄が有望だと説明

また、期初時点では保守的な業績予想を出す会社もあり、その場合、これまで伸び続けていた会社が今期だけ減益というカタチになることもあります。特に3月期決算の期初に当たる夏号と秋号は、その傾向が強いそうです。

こうした作業を続け、5~6時間かけて、気になった300~400銘柄に付箋を貼っていきます。その後、もう一度最初に戻って、今度は付箋が付いた銘柄だけをじっくり読んでいきます。

その際、企業のホームページをチェックして、なぜ利益が伸びているのか、説明資料に納得できるか、などを調べます。また、出来高を見たり、一過性の利益でないかどうかも分析します。こうした過程を経て、最終的に150銘柄くらいに絞り込むそうです。

営業利益に注目する理由

それにしても、なぜ営業利益に注目するのでしょうか。

配当にも直結することから、個人投資家はしばしば当期純利益に注目しがち。ただ、純利益や経常利益は為替変動に伴う費用など、一過性の費用に左右されるケースが少なくありません。本業の儲けを反映している営業利益のトレンドで分析するのが、最も理にかなっているというわけです。

一方で、張谷部長は四季報の予想を参考にはするものの、鵜呑みにはしないといいます。四季報の担当記者によって、業績予想の精度はまちまちだからです。「あくまでも銘柄発掘のきっかけとして使い、最終的には自分でチェックすることが必要です」(張谷部長)。

このチェックの際、事業内容や好調な理由が理解できない銘柄は見送るというのが張谷部長のスタンス。株主構成や浮動株の多寡、増収の理由が合併だった、などの観点から、さらに振り落とすそうです。

逆に要注目なのは、成熟産業でありながら、なぜか業績が良くなっている会社。「まだ顕在化していないけれど、水面下で盛り上がりつつあるテーマが浮かび上がってくることがあります」(同)。直近だと、鉄鋼業界の周辺、中でも耐火物メーカーが注目だといいます。

個人投資家の場合、資金が潤沢ではないので、購入できる銘柄も限られてきます。そこで、得意なジャンルに絞って読み込むのも一法だと、張谷部長は指摘します。

仕事のために仕方なく読み始めたことで培われた、張谷部長の独自の読み方。もし食わず嫌いで四季報を敬遠しているのであれば、まずは張谷スタイルを参考にしてみる価値があるのではないでしょうか。