はじめに

先週末終値より423円安の2万2,271円で引けた10月15日の日経平均株価。10月2日の年初来高値から、わずか2週間足らずで9%近い下落となりました。

足元の下落トレンドを決定づけたのは、11日の915円18銭安(3.89%安)。前日の米国株式市場が大きく下落した流れを受けての展開でしたが、日経平均株価は一時1,000円を超える急落となり、日本以外の海外の株式市場も大きく下落し、世界同時株安の様相を呈しました。

日本株式市場についての解説記事は数多く世に出ていますので、今回はあえてアジア株式、主に中国と台湾の株式市場に焦点を当ててみましょう。


米国の金利上昇がもたらす下落相場

アジアの株式市場が全面安になったのは、日本の株式市場と同じく、前日の米国株式市場の下落が影響していますので、少しだけ背景を再確認しましょう。

10月10日の米国株式市場では同国の代表的株価指数であるNYダウ30種平均が前日比3.1%安の2万5,598.74ドルで取引を終え、今年2月以来の大幅下落となりました。今回の下落は原因が1つではなく、複数の要因が影響していると考えています。

1つ目は、そもそも米国の株式市場が過熱気味であるということです。NYダウ30種平均は今年の1月下旬に2万6,600ドルという高値をつけたあと、一時2万3,500ドルまで値を下げましたが、その後は順調に値を戻し、先月下旬には2万6,700ドルを超えました。

難しいことは置いておいても、同指数のチャートを見てみれば、昨年の6月ごろから多少の上下はしつつも、ほぼ右肩上がりで上昇してきていることはわかるでしょう。

2つ目は米国と中国の貿易摩擦問題、3つ目は米国の金利上昇が挙げられます。そして、ここにきてIMF(国際通貨基金)による米国の2019年経済成長率予想が2.7%から2.5%に下方修正されたことや、トランプ大統領によるFRB(連邦準備制度理事会)に対する批判的な意見の表明など、様々な要因が絡み合ったことによる急落だったのでしょう。

中国の株式市場はどうだったか

本題に戻り、アジア最大の経済大国である中国の株式市場を見てみましょう。10月11日、同国を代表する株価指数である上海総合指数は142.38ポイント安(5.22%安)の2,583.46ポイントとなりました。

当然、前述の様に米国の影響もあるものの、中国独自の原因もあるように思えます。中国は今月初旬に国慶節という連休があったため、連休明けとなる8日に大きく下落し、その後2日間は凪の状態であったものの、11日に再度大きく下落したということで、10月に入ってからは大きく下落した株式市場の1つとなっています。

連休中である7日に同国の中央銀行にあたる中国人民銀行は預金準備率(民間銀行における預金の一定割合を強制的に預金させる率)を15.5%から14.5%に1%引き下げることを決めました。預金準備率の引き下げは7月に続き今年3回目になります。

この背景には米中貿易摩擦による景気下振れに対する対応と考えられますが、人民元に下落圧力がかかるという点には気を付けなくてはいけません。複数の中国当局関係者は「為替水準は市場メカニズムによって決定される」と発言していますが、これは人民元安を容認するという姿勢と捉えられる可能性もあり、同国内からの資本流出を加速させかねません。

一方で、この発言は今⽉中旬に発行が予定されている⽶国財務省の為替報告書において、中国が為替操作国であると認定されることを回避するための発言であり、過度な人民元安に対しては当局が適切な対応をするとの見方もあります。

最も厳しかったのは台湾の株式市場

株式投資という観点ではあまり日本では馴染みがないかもしれませんが、11日の世界同時株安において、アジア圏で最も大きな下落を記録したのは台湾の株式市場でした。

同国を代表する株価指数である加権指数は660.72ポイント安(6.31%安)の9,806.11ポイントとなりました。⼼理的な節⽬であった1万ポイントを下回り、 2017年4⽉以来およそ1年6カ⽉ぶりの安値を記録しました。同国の株式市場は10月に入りすでに10.9%も下落しています。

筆者は今年の4月まで2年弱台湾の首都台北に住んでいたため、同国の投資家や専門家にも話を聞いてみました。「台股黑⾊10⽉」という言葉をよく耳にするようで、この10月が台湾株にとって暗黒時代という意味になります。イメージとしてはブラックマンデーのようなものかと思います。

同国を代表する経済紙の経済日報によれば、11日の急落により同国の個人投資家は1日で平均20万台湾ドル(約72万円)の損失を出したと報じています。

同国の主要産業が半導体などということもあり、前日の米国株式市場でハイテク株を中心に下落したことも、同国にとっては逆風となったようです。具体的には台湾積体電路製造(TSMC)や電⼦機器製造の鴻海 (ホンハイ)精密⼯業は日本の投資家にも知られていると思いますが、両銘柄とも11日は7%以上の下落となっています。

今回の相場展開から学ぶこと

冒頭でも述べましたが、これまで株式市場には米国をはじめとして過熱感が出てきていました。これはファンダメンタルズ分析ができない投資家であっても、多少の株価の上下をならしてチャートを眺めれば、ずっと右肩上がりであったことはすぐに理解できると思います。そして、そこに米国の金利上昇や米中の貿易摩擦など、不安要因がいくつも重なってきたのです。

こうなると、正確にいつと言い当てることは難しくても、そろそろ大きな下落が来るかもしれないという事は容易に想像できるかと思います。この時、重要なのは不用意にポジションを膨らませたりせず、いかにキャッシュポジションを増やしていくかということになります。

今回の急落後、相場は一時的な反転する場面もあるかと思いますが、依然として不透明な相場展開が想定されるため、改めて自身の投資戦略を見直すことがよいでしょう。

(文:Finatextグループ アジア事業担当 森永康平)